相続放棄は、期限内に家庭裁判所へ申し立て受理されることが必要です。手続きの大まかな流れ、書類を提出する裁判所の場所はどこかを説明します。ほかにも申述書の取得、提出方法や、裁判所から送られてくる照会書、証明書の概要をまとめました。
目次
相続放棄は家庭裁判所とやり取りするもの
『相続放棄』は、家庭裁判所への申し立てが必要です。手続きはすべて、家庭裁判所を通して行います。
遺産を相続することになり、負債の方が多く放棄したいと考えた場合は、遺産の所有者である『故人の住民票』があるエリアの家庭裁判所に申請しましょう。
相続放棄の大まかな流れ
相続放棄をするには、裁判所に『申述書』を提出します。申述書は、相続する意思がないことを表明する書類です。
裁判所で申述書を確認し特に問題がないと認められれば、数日以内に『照会書』が届きます。照会書は、裁判所側が相続放棄の意思を再確認するものです。
放棄したい理由など、いくつか書かれている設問に記入して返信しましょう。
手続きが完了すると、『相続放棄申述受理通知書』が送られていきます。通知書の再発行はできないため、大切に保管しておきましょう。
通常、裁判所に関わるタイミングは全部で3回
通常、裁判所と関わるタイミングは全部で3回です。
- 申述書を提出するとき
- 照会書を返信するとき
- 通知書が送られてくるとき
申請書の提出は、直接裁判所に出向いても郵送で手続きをしても構いません。地域によっては照会書の手続きは省略されて、申請書の受理のみで完了となるケースもあります。
照会書ではなく面談で確認されることもあるため、管轄の家庭裁判所に確認しましょう。
(1)裁判所に申述書を提出しよう
相続放棄をすると決めたら、裁判所に申述書を提出しましょう。
最初にどの裁判所へ提出するのか確認し、書類が手元に届いたら必要事項を記入します。対象の裁判所に提出すれば、手続きは完了です。
直接裁判所に出向いて提出することも可能ですが、遠方であったり時間が取れない場合は、郵送でも提出を受け付けています。自分にとって都合のよい方法で提出しましょう。
提出先の家庭裁判所を確認する
相続放棄の申述書は『被相続人の住民票を管理している場所』です。自分が住んでいる地域ではないため、注意しましょう。
たとえば、実家に住む親が亡くなり遺産を相続することになった場合は、実家がある場所の家庭裁判所に書類を提出します。
管轄の家庭裁判所は裁判所の公式サイトで公開されているため、確認しておきましょう。
申述書を取得して記入する
申述書は、裁判所の公式サイトでダウンロードができます。記入例も公式サイトに記載されているため、参考にしましょう。
近くの家庭裁判所でも書類を取得できるため、不明点について確認したいときや、ダウンロード環境がないときは活用できます。
相続放棄申述書を書くときは、どのような遺産が残されているのかを記入しましょう。マイナスの遺産も負債として記載します。
署名と捺印、住所などを記入し、提出しましょう。遺産は細かく計算する必要はなく、だいたいの記載で問題ありません。捺印も実印である必要はなく『認め印』で提出できます。
申述書自体は1枚の書類になっているため、それほど記入に時間がかかりません。残された遺産に借金が多い場合など、相続放棄する意思がかたまっている場合は、早めに手続きを済ませましょう。
裁判所に申述書を提出する
申述書が記入できたら、対象の裁判所へ提出します。直接でも、郵送でも手続きができます。郵送で送る場合は相手が受け取っているか確認するため、受け取りを確認できる方法で郵送すると安心です。
郵便が届いておらず、期限内に手続きができなくなってしまうと問題なので、きちんと最後まで手続きを完了させましょう。
相続放棄の手続きは期限も設けられているため、相続が発生したことがわかったら、すぐに手続きしたほうが安心です。
期限までは3カ月余裕があるため、放棄するかしないか迷っている場合は、よく考えて手続きをしましょう。
(2)裁判所から照会書が届いたらきちんと返信しよう
申述書を提出後、裁判所から照会書が届きます。相続放棄の意思確認のため、質問に答える必要があります。
相続放棄の手続きはまだ完了していないため、照会書が届いたら必ず返信しましょう。
照会書とは
照会書は、相続放棄の意思確認や理由を確認するための書類です。相続人が放棄をするつもりがないのに、何らかの理由で放棄の手続きが受理されてしまった場合、遺産を受け取ることができません。
相続に無関係な人や親類などが、勝手に相続人の相続放棄の手続きを進めてしまう、といったケースを防ぐために本人の確認を取る意味が込められています。
『相続放棄をする理由』や『手続きを行ったのは自分の意思によるものか』などいくつかの質問があるので、正直に答えましょう。
なお、照会書には相続財産を使ったか確認する項目もあります。遺産を使っている場合は相続の意思があるとみなされるため、相続放棄ができません。
遺産に該当するかわからない故人の財産は、相続放棄が完了するまでは使わずに専門家へ相談するのがよいでしょう。
照会書への回答
照会書への回答を行うと、裁判所で相続放棄の手続きが進められます。問題がない場合は相続放棄が完了し、遺産の相続人としての対象に入っていないと見なされます。
照会書の回答は直接裁判所に持参するか、郵送で返送しましょう。地域によっては照会書ではなく面談の場合もあります。
面談を求められた場合は裁判所に出向く必要があるので、あらかじめ確認しておきましょう。
照会書が来ない場合は?
住んでいる地域によっては、照会書がこないこともあります。裁判所によって、紹介所での確認を省略していることがあるためです。
照会書がこない場合は、特にこちらからする手続きはありません。相続放棄の手続き完了の通知書がくるのを待ちましょう。
ただし、手続きの完了通知も来ないようであれば、何らかのトラブルで書類が届かないことが考えられるため、裁判所への問い合わせが必要です。
相続放棄の期限までに完了通知がこないと手続きができなくなる可能性があるため、早めに確認しましょう。
(3)裁判所から証明書が届いたらしっかりと保管しよう
申述書の提出や紹介書への回答が終わると、相続放棄が完了した証明書が届くでしょう。
借金などのトラブルで相続放棄をした場合、証明書があれば相続人でないことを証明できます。届いた証明書は保管しておきましょう。
相続放棄申述受理証明書とは
『相続放棄申述受理証明書』は、相続放棄が完了したことを証明する書類です。手続きが完了したとき送られてくるものは『通知書』となっています。
通知書と証明書はどちらも同じ形式の書類ですが、状況によっては証明書を提出するよう求められることがあります。
証明書が必要な場合は、裁判所へ申請して交付してもらいましょう。1通につき150円の交付手数料がかかります。
紛失したら、あるいは複数必要であれば、相続放棄申述受理証明書を申請
もし受理通知書を紛失してしまったときは、同じものを再交付することはできません。ただし、同じ形式の証明書は複数交付してもらえるため心配はないでしょう。
提出を求められたときは、裁判所に申請すれば何枚でも交付してもらえます。証明書は、ほかの相続人がいる時などに『相続放棄をした者がいる証明』として提出が必要です。
ほかにも『故人の債務を相続していないことの証明』に、証明書のコピーの提出を求められる場合があります。
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まとめ
相続放棄は、家庭裁判所とやり取りをして認められるものです。手続きは書類の提出のみですが、状況や地域によっては面談が必要なこともあります。
相続放棄ができる期限は、原則相続開始から3カ月のため、早めに手続きを済ませておきましょう。照会書が送られていきたときは返信し、通知書を受け取った時点で手続きはすべて完了です。