相続放棄しても生命保険は受け取れる?方法や注意点、税金について解説

相続放棄をした場合、生命保険金がもらえるのかどうかをまとめました。どのようなケースで受け取れるのか、通常の相続をした時との税金の差も説明します。生命保険金と相続放棄の概要や、手続きの方法を見ていきましょう。

生命保険金の扱い

生命保険金は、契約者が死亡した再に発生する死亡保険金のことです。受取人は多くの場合、契約者以外に設定されています。

生命保険金の特徴は相続の有無にかかわらず受け取れる点です。受け取り方や、生命保険金が発生したときどのようにすればよいのか、見てみましょう。

生命保険金とは

生命保険は単体で契約するほか、医療保険のオプションとしてつけるなど、さまざまな加入方法があります。

『生命保険金』は契約者本人が亡くなった場合に発生するため、原則『契約者以外』が受取人になっています。

保険金の請求は受取人が行う必要があるため、自分が受取人になっている保険の存在を知らない場合、請求自体ができません。

また、保険金を受け取った場合は『相続税』の対象となり、所得税や相続税、贈与税などを支払う義務が生じます。生命保険に加入した場合は、契約者が受取人に

  • 保険の種類(死亡保険)
  • 保険会社の情報(連絡先・担当者など)
  • 契約者番号(証券記号番号)

などを事前に伝えておくことが大切です。保険会社が調べて自動的に保険金を支給してくれるわけではないため、注意しましょう。

生命保険には本人が死亡したとき以外にも、障害を負ったときに発生するものもあります。契約者本人が手続きできないような高度障害が対象のため、受取人に情報を伝えておくことが重要です。

生命保険金の受け取り方

生命保険金を受取人が受け取るには、まず、契約している保険会社に連絡を入れましょう。保険証券の番号や亡くなった日、原因などを伝えると対応してもらえます。

保険金が出る場合は、手続きの書類が送られてくるため提出作業を進めましょう。保険会社の規約に則った保険金が支給されます。

受け取り手続きには医師が発行した、故人の『死亡診断書』などが必要になるため、準備しておきましょう。『受取人の身分証明書』なども提出が求められます。

相続放棄とは

親や身内など、故人の遺産を相続したくない場合『相続放棄』をすることができます。相続放棄とは、故人の財産を相続しないことを表明するための届け出です。

『受け取りたくない遺産』がある場合は、必ず手続きを行いましょう。相続放棄をするつもりでも遺産の一部を使ってしまってからの場合、相続する意思があると判断され、認められないケースがあります。

相続が発生してから早めに手続きするように心がけることが大切です。

相続放棄の手続きの概要

相続放棄の手続きは、家庭裁判所で行います。郵送でも対応していますが、状況によって面談や聞き取りが実施される場合もあるので想定しておきましょう。

必要書類を用意して、準備を進めます。相続放棄の届け出を行う裁判所は、相続人ではなく『故人の住民票』の届け出がある地域を管轄している裁判所です。

届け出には

  • 亡くなった本人の戸籍謄本または戸籍附票
  • 亡くなった本人の住民票除票または戸籍附票
  • 届け出をする本人(受取人)の戸籍謄本

が必要です。収入印紙も800円分用意しましょう。家庭裁判所によって指定された金額、枚数分の郵便切手も必要です。

届け出が完了すると、家庭裁判所から相続放棄の意思を確認する『照会書』が届くため、記載して返送しましょう。

意思確認については、裁判所によって省略されるケースや面会が必要なケースなど状況によって変わります。

こちらも読まれています相続放棄の手続きについて。全体の流れをわかりやすく解説

遺産相続は期限内に申請をすれば放棄できるのをご存知でしょうか。遺産は必ずしもプラスになるわけではなく、マイナスになることもあるのです。そのよ...

『単純承認』していると見なされれば、放棄はできない

相続放棄は誰でもできる手続きではなく『単純承認』に該当するとみなされれば、届け出をしても認められません。

単純承認に該当するのは『相続財産を処分していたり、一部を使ってしまったりする場合』です。相続放棄の可能性があるときは、単純承認とみなされないように気をつけましょう。

どのようなケースが単純承認にあたるかは、それぞれの状況によっても変わるため、専門家に確認を取ると安心です。

相続放棄の『放棄』の範囲

相続をする範囲は、故人の遺産すべてが該当します。

たとえば「貯金は相続したいけれど借金は相続したくない」など、自分の都合で相続放棄はできません。すべてを相続するか、貯金も含めて放棄するかを選びましょう。

故人の資産が借金を上回る場合は相続しても大きな問題になりませんが、多額の借金がある場合や、処分しなければいけない遺産があると厄介です。

相続前には、故人の遺産にどのようなものがあるのか把握してから利用や処分を決定しましょう。場合によっては放棄したほうが、余計な負の遺産を抱えずにすみます。

相続放棄しても生命保険は受け取ることができる

相続放棄したときに、生命保険金の受け取りができるか気になる人は多いのではないでしょうか。

死亡者と受取人の関係や、受取人の設定方法にもよりますが、ほとんどの場合相続放棄をしていても生命保険金を受け取れます。

生命保険金は死亡者のものではなく『受取人の財産』とみなされるためです。受取人の設定によっては、相続財産となるため気をつけましょう。

まずは保険金の受取人が誰かを確認しよう

まずは、生命保険の受取人名義を確認します。受取人が『相続人名義』なら、相続放棄しても受け取りが可能です。もし、受取人の欄が『契約者本人』となっている場合は受け取ることができません。

たとえば、生命保険だけでなく『入院中に発生した保険金』などがある場合、受取人は契約者本人になっているため相続放棄すると受け取れません。

死亡保険金が死亡した本人になっていることは稀ですが、保険の種類や状況にもよるため、あらかじめ確認しておきましょう。もし、相続放棄をするつもりでいるのであれば『故人名義の保険金』に手をつけないことが重要です。相続財産の一部を使ったとみなされてしまいます。

相続放棄しても相続人の財産であれば受け取ることができる

相続放棄したあとで自分(相続人)名義の生命保険金が見つかった場合は、受取人の財産とみなされるため、受け取りが可能です。見つかった遺産のなかに生命保険金と借金の両方があるため受け取りを迷っている場合は、相続放棄して生命保険金のみを受け取ることができます。

『相続放棄した本人が受取人』になっていることが条件ですが、他の遺産を受け取りたくない時でも、諦めず方法を探してみましょう。

生命保険や退職金、遺族年金など、相続放棄しても受け取れる遺産が見つかるかもしれません。

他にも死亡退職金や遺族年金は受け取ることが可能

相続放棄した人が受け取れるものとして『遺族年金』があげられます。遺族年金は相続対象のものではなく『年金受給権がある人』が対象です。死亡退職金の場合、状況によって相続放棄後に受け取れるかが変わります。

公務員は、死亡退職金が遺族の権利と認められているため、放棄後も受け取りが可能です。民間の企業の場合、死亡退職金の扱いがどのように規定されているか確認しておきましょう。遺産としてではなく、遺族名義で受け取れるものであれば、問題ありません。

生命保険金にかかる税金の違い

生命保険金を受け取ると、原則『税金』がかかります。他に発生している遺産や生命保険金の金額にもよりますが、相続放棄するしないにかかわらず、所定の税金を支払いましょう。

相続放棄した場合と相続した場合の税金の取り扱いはやや異なるため、それぞれのケースについて見ていきます。

相続放棄した場合

本来、相続放棄した場合と、相続した場合で生命保険金にかかる税金に差はありません。しかし、相続人には1人あたり500万円までの『非課税枠』が設けられています。

非課税枠は1人500万円です。相続人が2人いて、1人が相続放棄した場合、相続した人は1000万円の非課税枠を利用可能です。相続放棄した人には、非風枠はありません。

生命保険金だけもらう場合は、税金が高くなるため注意しましょう。

通常通り相続した場合

通常の相続をした場合、500万円まで非課税枠が使えるため、生命保険金や遺産が500万円までに収まる場合は税金が発生しません。

借金などを差し引いて、生命保険金の方が多い場合、税金面のことを考えると相続放棄よりも相続したほうが有利なケースもあります。状況によって相続放棄するか、相続するか考えるとよいでしょう。

こちらも読まれています相続放棄しても遺族年金はもらえる。もらえる年金・給付金まとめ

自分への相続の内訳が、借金や滞納金など負の遺産の方が多い場合『相続放棄』をするという選択肢があります。相続放棄をすると、遺族年金や生命保険金...

まとめ

相続放棄をしても生命保険金は原則受け取れますが、受取人が相続人名義になっていることが条件です。

死亡した本人が受取人になっている保険金は受け取りできません。年金なども相続放棄して受け取りできるものの1つですが、死亡退職金は企業によって扱いが異なります。

相続放棄は借金などマイナスの遺産があるときに役立ちますが、税金面では優遇されないため、よく考えてから選択しましょう。