相続放棄しても遺族年金はもらえる。もらえる年金・給付金まとめ

自分への相続の内訳が、借金や滞納金など負の遺産の方が多い場合『相続放棄』をするという選択肢があります。相続放棄をすると、遺族年金や生命保険金などの受給権も消失してしまうのでしょうか?相続してももらえる年金・給付金について解説します。

遺族年金とは

国民年金や厚生年金の被保険者、元被保険者が何らかの理由で亡くなったとき、遺族が受け取れる公的年金を『遺族年金』といいます。

一家の大黒柱がいなくなっても、残された遺族が困窮しないようにするための措置です。

遺族年金はどのくらいもらえるの?

遺族年金の支給額は、故人がどの年金に加入していたかによって異なります。個人が国民年金に加入していた場合は『遺族基礎年金』、厚生年金の場合は『遺族厚生年金』です。

たとえば、故人が自営業の場合、妻と子1人の家庭には月額8万3633円、妻と子2人の家庭には月額10万2325円の『遺族基礎年金』が支給されます。(平成30年度の金額)

一方で、故人が会社員や公務員だった場合は『遺族基礎年金+遺族厚生年金』が支給額です。具体的な金額は、加入者(故人)の平均標準報酬月額や、残された遺族の家族構成から算出されます。

例をあげると、平均標準報酬月額が25万円で妻と子1人の場合、遺族基礎年金+遺族厚生年金の合計額が、毎月約11万7000円となります。

遺族年金はだれがもらえるの?

遺族基礎年金、遺族厚生年金ともに、受給のため故人および遺族が満たすべき要件が定められています。

たとえば遺族基礎年金の場合、受給の対象者は『子どものいる配偶者』または『子ども(18歳未満)』です。また、故人によって生計が維持されていたのを証明する必要があります。

『生計が維持されていた』とは、遺族の収入が850万円未満、または所得が655万5000円未満に該当する場合です。

また、子どもがいない配偶者は遺族基礎年金をもらえないという点にも注意しましょう。遺族厚生年金の場合は子どもの有無に関わらず、配偶者は受給対象です。

相続放棄をしたい

遺産相続というと土地や金銭の分配などが思い浮かびますが、なかには故人の遺産を相続せずに『相続放棄』を選択する人もいます。相続放棄の背景および原則についてみていきましょう。

故人の負債を放棄するためには『相続放棄』が有効

相続で得られるものは、資産や土地などのプラスの遺産だけとは限りません。

故人が家族に内緒で借金をしていた場合、まず相続財産の中から借金返済をおこないますが、返済しきれなかったものは遺族にそのまま引き継がれます。

負の遺産がある場合『相続放棄』を選択することも可能です。相続放棄をすれば、故人の残した以下のようなものの相続義務は発生しなくなります。

  • 借金
  • 保証債務
  • 未払い家賃
  • 滞納金
  • 損害賠償債務
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自分への相続に、借金や滞納金などの負の遺産が多い場合は『相続放棄』をする選択肢もあります。相続放棄をすると遺族年金や生命保険金などの受給権も...

相続放棄は『全て』放棄することが原則

相続放棄は、遺産の内容に関わらず『全て』放棄することが原則です。借金や滞納金などの負の遺産はもちろん、土地や預貯金、現金などの一切も放棄する必要があります。

ここで考えておかなければいけないのが『相続放棄のデメリット』です。

相続放棄とは相続人から除外されるということですから、故人が残した宝石類や骨董品、自分が慣れ親しんだ生家さえも、遺産に含まれていればすべて放棄しなければなりません。

もし相続人の全員が相続放棄をした場合、最終的には国の所有となります。

相続人のものであれば相続放棄しても影響なし

『相続放棄の対象にならない財産』があることも覚えておきましょう。たとえば『みなし相続財産』は、相続放棄の対象外です。

みなし相続財産として代表的なものは、死亡保険金や死亡退職金です。これらの受取人が相続人に指定されている場合、それは『相続人固有の財産』つまり相続人のものなので、相続放棄をしても、基本的に受け取りが可能です。

また、遺族基礎年金および遺族厚生年金も、受取人(遺族)のものですので、相続放棄とは関係なく受給できます。

相続放棄をしてももらえる給付金・年金一覧

相続放棄をしても受け取れる給付金や年金について、以下に詳しく解説します。

死亡退職金

故人が亡くなったときに、企業から『死亡退職金』が支払われることがあります。

相続放棄した状態で遺族が死亡退職金が受け取れるかどうかは、勤務先の退職金規定によってケースバイケースです。

「本人が亡くなったときは、退職金は遺族が受け取る」などの規定や、国家公務員退職手当法に準じた記載があれば『死亡退職金=受取人固有の財産』とされ、相続放棄後の受け取りは可能です。

逆に、受取人が被相続人(亡くなった人)と決まっている、または受給権者が決められていない場合は『故人の財産』となるので、相続放棄後の受け取りは不可になります。

遺族年金

相続放棄をしても、遺族年金は受給が可能です。遺族年金は固有の『権利』に基づいて遺族が受給できるもので、相続財産には含まれないためです。

受け取れるか否かは相続放棄には関係がなく、遺族および故人が遺族年金の受給の要件を満たしているかによって決まります。

生命保険金

生命保険金(死亡保険金)は、『みなし財産』の代表的なものです。夫が亡くなった際、生命保険金の受取人が妻になっている場合、相続放棄をしていても妻は生命保険金を受け取れます。

受取人が『被保険者』(亡くなった人)に指定されていた場合はどうでしょうか?この場合『生命保険金=亡くなった人の財産』です。つまりこの場合に相続放棄してしまうと、保険金を受け取ることができません。

逆にいえば、受取人が被保険者に指定された生命保険金を受け取ってしまったら、相続放棄はできなくなります。

未支給年金

例えば年金受給者が、ある年の3月に突然亡くなったという場合を考えてみましょう。年金は2カ月に1度支給されるので、1月と2月分の年金が『未支給年金』となります。

未支給年金は、相続放棄に関わらず、故人と生計を共にしていた一定の範囲の遺族に支払われます。支給される遺族の順位を、高い順に並べると以下のようになります。

  1. 配偶者
  2. 父母
  3. 祖父母
  4. 兄弟姉妹
  5. 三親等以内の親族
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相続放棄の注意点

相続は、被相続人が亡くなるとすぐに効力を発揮します。遺産をどうするか早めに決めなければなりませんが、よく考えずに決定してしまうと取りかえしのつかないことになってしまうので、慎重に判断しましょう。

相続放棄は『撤回』できない

原則的に、相続放棄をしたら撤回はできません。相続放棄の撤回ができるのは以下の場合に限られます。

  • 詐欺または脅迫によって相続放棄をさせられた場合
  • 未成年者が法定代理人の同意なしに相続放棄した場合
  • 成年被後見人本人が相続放棄申述をした場合

負債のために相続放棄した後、たとえ不動産に負債以上の価値があると分かっても相続する権利はありません。安易に相続放棄を決めず、まずは周囲とよく話しあいましょう。

また、遺産相続には『熟慮期間』が定められており、遺産の相続を知った日から3カ月以内までに相続するか放棄するかを決める必要があります。

3カ月を過ぎてしまうと、場合によっては相続放棄ができなくなるので、気をつけましょう。

まとめ

親や配偶者から相続されるのは、必ずしもプラスの遺産だけとは限りません。万が一、借金や未払金、損害賠償金などを肩代わりしなければならなくなったら『相続放棄』を選択する方法もあります。

相続放棄をすると自分の権利が消失する場合もありますが、相続放棄に関わらず受給できるものもあります。死亡保険金や死亡退職金の受け取りの対象者を確認しておきましょう。