会社で働いて定年を迎えた。諸事情があって辞表を提出した。さまざまな理由から会社を辞めたとき、金額に個人差はあれど退職金をもらう人も多いです。ですが、退職金はお金ですから、どうしても税金がかかってきます。これからの生活のこともありますし、支払う税金はなるべく少なくしたいもの。ここでは、退職金にかかる税金や節税の仕方について解説します。
退職金にかかる税金について
退職金には所得税や住民税がかかってきます。しかし、長年の労働に対する報酬であるため、他の所得とは分離して税額を計算する分離課税となっているなど、税負担が軽くなるような仕組みになっています。
退職金の税金はすべてにかかるかかるわけではありません。退職金の源泉徴収前の金額から退職所得控除額を差し引いた分の半分の金額が課税対象です。
退職所得控除額は、勤続年数が20年以下のときは、40万円×勤続年数。
20年を超えるときは、800万円+70万円×(勤続年数-20年)の計算式で割り出す事ができます。
しかし、この計算にはいくつかの例外があります。
障害者になったことが原因で退職した場合、この時の退職所得控除額は、もとの計算式で割り出された金額に100万円を足した金額となります。
前年以前に退職金を受け取ったことがある場合や同じ年に複数の勤務先から退職金を受け取る場合などは、退職所得控除額の計算方法が異なることがあるので注意が必要です。
所得税は退職金の課税対象額により5%から45%がかかります。
また、退職金の支払いのときに「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出した人は、勤務先によって所得税などの計算や源泉徴収がされるため、原則、確定申告は必要ありません。しかし、「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかった人は、退職金の20.42%の所得税額などが源泉徴収されますが、確定申告を行うことにより支払いすぎた分が戻ってきます。
住民税は一律10%かかります。
こちらは確定申告をしても戻ってくることはありません。
退職金を節税(ふるさと納税)
自分で選んだ自治体などに寄付をし、確定申告をすれば、その金額から2000円を引いた分の金額だけ税金が控除され、さらには自治体ごとに異なる返礼品がもらえるふるさと納税。節税ができ、さまざまな品がお得にもらえるとして利用する人も増えているこの制度は、退職金でも利用することができます。
退職金は一度に大きな金額が入ってくるために、人によってはふるさと納税の限度額が上がることがあります。この限度額が上がるということは、控除される金額が増えるということであり、その分寄付できる金額が上がったということです。寄付できる金額が増えれば、寄付をする自治体の数を増やしたり、いつもより高価な返礼品を選ぶこともできます。
ふるさと納税にはワンストップ特例制度と呼ばれる制度があり、年間の寄付した自治体が5つまでなら、確定申告をしなくても寄付金控除が受けられる仕組みもあります。寄付した自治体に申請書に送ることで利用できます。同じ自治体に複数の寄付した場合でも、1自治体の扱いになります。
申し込みも簡単であり、サポート体制も整っているふるさと納税ですから、安心して利用できます。
ふるさと納税の注意点
退職金でふるさと納税をする場合の注意点としては、所得税は控除対象となるのに対し、住民税は控除対象外(一部例外があり)であるということが挙げられます。
住民税は収入があった翌年にその収入分の税金が課せられますが、退職金でそれをしてしまうと納税者の負担が大きくなってしまうことから、収入のあったその年に徴収しています。そのため、ふるさと納税の対象外としている自治体などが多いのです。
ふるさと納税を行うと、寄付した金額から2000円を除いた金額の税金が控除されます。寄付できる金額に上限はありませんが、控除されるのは自分が払っている税金の分だけです。
ですから、払っている税金以上の寄付をしても、いわゆる純粋な寄付金となってしまい、2000円以上の負担になってしまいます。返礼品によっては、お得感もゼロになってしまいます。そうならないために、しっかりと上限額を知っておく必要があります。
年収や家族構成ごとの限度額が提示されているサイトや限度額をシミュレーションできるサイトもありますので、よく確認してから行うようにしてください。
idecoをつかって節税
idecoとは、個人型確定拠出年金とも呼ばれ、加入者が拠出した掛け金を加入者自ら運用を行い、その運用の結果に基づいて給付を受ける制度です。退職金として、自分でお金を積み立てていきます。
基本的には公的年金に加入している60歳未満のすべての方が加入できる制度で、税制優遇措置があり、拠出した金額は全てが所得控除の対象となります。また、通常の利息、配当金などは税金が差し引かれますが、確定拠出年金制度だと運用収益は非課税です。税金で差し引かれるはずの金額も運用に回すことができます。
60歳以降に年金または一時金として受け取れます。年金として受け取る場合には、雑所得扱いとなるため、7.6575%の所得税が差し引かれますが、他の公的年金などと合わせて公的年金等控除扱いとなります。そのため一度は所得税が差し引かれますが、確定申告をすることによって取り戻せる可能性があります。
一時金として受け取る場合は、退職金と同じ扱いになり、税金などの計算は、退職金所得控除が使われます。どちらで受け取った方が良いのかは個人によって異なることもありますので、専門機関に相談するといいでしょう。
idecoの始め方
idecoを始めるには、まず取り扱っている金融機関(運営管理機関)を選んで、自分専用の口座を開設します。企業型の場合には、勤め先(事業主)が金融機関を選んでいるため、自分で選ぶことはできません。
どこを選んでも同じなような気もしますが、金融機関ごとに手数料などが大きく異なります。運用は長期間に渡りますから、手数料の高い金融機関を選んでしまうと最終的に数百万単位でもらえる金額が違ってくるということもありますので注意してください。
加入するときにかかる手数料には、加入時手数料と口座管理手数料があります。加入時手数料は口座の開設手数料として初めに、国民年金基金連合会に支払うものです。金額は加入する金融機関によって異なることがありますので、要確認です。
口座管理手数料は、金融機関に毎月支払う手数料です。金融機関によって大きく異なり、掛け金から口座管理手数料を差し引いた額が自分のお金となるので、この金額の差が大きく影響します。
選んだ金融機関に申込書類の提出すると、手続き完了の通知が国民年金基金連合会から送られます。それとは別に金融機関ごとに指定する記録関連運営管理機関から、運用状況を確認するためのIDなどの資料が送られてきます。掛け金の運用の履歴を管理したり、運用指図の受付も担当しています。
手続きが完了すると、掛け金が毎月26日(休業日の場合は翌営業日)に指定の口座から引き落とされます。口座残高不足などで引き落としができなかった場合は、その月の拠出はなかったこととされて、後から支払うことはできません。
まとめ
退職金にかかる税金のことや節税の仕方について分かっていただけましたか。ただもらうだけではなく、ふるさと納税やidecoについて知り、それらを利用することで、少しでも多くの退職金を手元に残したり、美味しいものを食べたりすることもできます。
いままで働いてきた報酬である退職金について理解を深め、節税などを最大限に利用して豊かな第二の人生を送ってください。