個人事業主の味方 小規模企業共済とは。メリットやデメリットをご紹介

個人事業主の方は小規模企業共済という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。中小機構が運営し、個人事業主の退職金代わりに積み立てを行う制度です。掛け金は課税対象から控除され、節税効果の高い制度になっています。小規模企業共済に加入する資格や加入方法、メリット・デメリットを紹介しますので、参考にして節税に役立てて下さい。

小規模企業共済とは

小規模企業共済とは中小機構が運営する制度です。

小規模企業共済制度

中小機構は中小企業を支援するための独立行政法人です。その支援の一環として、小規模企業共済制度を運営しています。小規模企業の個人事業主や経営者、小規模の会社役員などに向けた積立金制度で、任意加入で自ら資金を積み立てる共済制度です。

加入数は133万人

退職や事業の廃止時に解約することで、積み立ててきた掛け金に応じた共済金を受け取る事ができます。2017年3月の段階で全国の約133万人が加入しています。また、掛け金は月額1,000円から70,000円までの間で500円単位で選択できます。

納付方法は月、半年、年払いの3種類から選択でき、加入後でも1,000円から70,000円の範囲内であれば、500円単位で掛け金の増額や減額が可能となっています。会社ではなく、個人の預金口座からの口座振替での払い込みとなり、毎月18日が口座振替日です。

掛け金の前納も可能ーその場合は前納減額金を受け取れる

掛け金は前納でき、その際は掛け金月額×減額率×前納月額の累計の前納減額金を受け取れます。2017年11月から減額率は0.9/1,000とされ、前納減額金は毎年6月に口座に振り込まれるようになっています。

加入条件や方法について

加入条件

小規模企業の個人事業主や経営者、小規模会社の役員が加入する事ができますが、業種によって加入資格は異なり、常時使用する従業員数や立場が以下の通りで、いずれかにあてはまれば加入する事が可能です。

  • 従業員数20人以下の建設業、製造業、宿泊業や娯楽業のサービス業、不動産業、運輸業、農業の個人事業主や会社等の役員、共同経営者
  • 従業員数5人以下の卸売りや小売り業の商業、宿泊業や娯楽業以外のサービス業の個人事業主や会社等の役員、共同経営者
  • 従業員数5人以下弁護士、税理士法人の士業法人の社員
  • 従業員数20人以下協業組合の役員
  • 従業員数20人以下で主に農業の経営を行う農事組合法人の役員
  • 企業組合は組合員数が20人以下の役員

加入方法

小規模企業共済への加入方法は、まずは必要書類を揃えます。

立場によって必要な書類が異なるので注意しましょう。個人事業主は確定申告の控え、法人の役員は役員登記が確認できる書類が必要になります。共同経営者は個人事業主の確定申告、共同経営契約書の写し、報酬の支払いが確認できる書類が必要です。

これらに加え、中小機構の様式書類として、契約申込書、預金口座振替申込書を用意します。必要事項を記入し、商工会議所や都市銀行などの委託機関や金融機関の窓口へ提出します。

その際、事前に引き落とし口座の金融機関で預金口座振替申込書に確認印をもらっておきます。申込から約40日後に小規模企業共済手帳と小規模企業共済制度加入者のしおり及び約款が届き、手続き終了です。

メリット

小規模企業共済の一般的なメリットは、積み立て期間によって将来受け取れる共済金が掛け金総額よりも多くなることが挙げられます。小規模企業共済ならではのメリットは以下の2つです。

税制上の優遇

まずは税制メリットです。共済金の掛け金は全額を課税対象所得から控除でき、節税になります。個人向けの所得税の確定申告には小規模企業共済等掛金控除という項目があり、納税者がその制度で掛け金を支払った場合には所得控除が受けられるとされています。

1年以内に行った前納掛け金も控除の対象です。その節税効果は高く、例えば所得の課税対象額が400~600万円の場合、掛け金に応じて節税額が変わりますが、掛け金1万円で3万円以上、掛け金7万円では20万円以上の節税効果が得られます。

事業資金の借り入れ

2つ目は事業資金の借入です。一般貸付、傷病災害時貸付け、創業転業時・新規事業展開等貸付け、福祉対応貸付け、緊急経営安定貸付け、事業承継貸付け、廃業準備貸付けと7つの契約者貸付けがあります。

一般貸付のみ金利が1.5%ですが、それ以外は0.9%と低い金利で融資を受けることが可能です。また、審査書類も少なく、融資を受けるまでの期間が最短で申込当日と短く、緊急の時でも安心です。

デメリット・注意点

20年以上加入しないと元本割れになる

小規模企業共済のデメリットは、20年以内の任意による解約は元本割れの可能性があるということです。65歳未満の契約者が自己の都合で解約した場合や、12カ月以上の滞納によって強制的に解約となった場合は元本割れを起こします。

12カ月未満で解約すれば戻ってくる額は0円で、12カ月以上から84カ月未満で80%、払い込み月数によって割合が少しずつ増え、240カ月以上246カ月未満で100%、それ以上は720カ月の120%を上限とし、増えなくなります。

減額すると減額分は運用されない

小規模企業共済では掛け金を運用して支払いの資金にしています。掛け金の増額がなされれば、増額した時点から解約まで運用され、共済金の計算がされます。

しかし、減額をした場合は減額する前に支払った差額の部分が運用されません。それどころか、解約手当金をもらう時、減額した掛け金分は減額後の期間を納付期間として数えないために、納付月数が足りずに元本割れする可能性があるのです。増額する場合はいいのですが、減額する場合はリスクを理解し、減額の期間を一時的なものに留めることをおすすめします。

まとめ

小規模企業共済は、税制対策や低金利での融資などメリットの大きい制度ですが、期間や解約の理由によっては元本割れというデメリットも存在します。そのことを十分理解したうえで活用することをおすすめします。最大70,000円の掛け金が可能ですが、もしもの時の減額するリスクを考えて、自分に合った掛け金を設定する事が重要です。