年金と一時金。退職金として受け取るときの相場や、税金について。

金額が大きく、その後の生活にも大きな影響を与えるだけに、退職金について知識を持っておくことは大切です。実は退職金の受け取り方には複数の方法があります。ここでは退職金の受け取り方について解説します。具体的に何が違うのか、どこで得や損が発生するのかといった点についても紹介しますので、受け取り方を決める際の参考にしてみてください。

一時金と年金方式

退職金の受け取り方には、一時金と年金方式という2つの種類があります。どの方法で退職金を受け取れるかは、会社によって制度が異なります。会社によっては選択できないところもありますから、まずは確認しておきましょう。

一時金方式

一時金とは、退職するときに一括してお金を受け取る方法です。一度に大きなお金を手に入れることになり、住宅の修繕費やローンの繰り上げ返済など、老後のための準備資金として自由な使い方をすることが可能です。

また、安全性という点でも優れています。年金方式で退職金を受け取る場合、会社や年金を運営する基金が破綻してしまうと予定していた額を受け取れない可能性が出てきます。一時金であればそういった心配は不要ですから、企業年金の種類や運営している基金に不安がある場合は一時金を検討するのもいいでしょう。

年金方式

年金方式とは、退職金を国民年金や厚生年金といった公的年金と同じ扱いにすることです。一定の運用益が加算されるため、一時金で受け取るよりも受取総額が大きくなると言うメリットがあります。自分で資産運用していく自信がないというときは、年金方式が向いていると言えるでしょう。

税金がかからないのはどっち

どちらの方法で受け取るか、その判断材料になるのが税金です。

一時金

一時金には大きな税制優遇枠が設けられています。長年の働きによるお金ですし、老後の貴重な財産になることが考慮されるからです。

非課税枠は勤続年数が20年以下のときは40万円×勤続年数、20年を超える場合は800万円+70万円×(勤続年数-20年)となります。非課税枠をオーバーした分についても、課税対象となるのは2分の1の範囲だけなので、税金の負担はかなり小さくなると考えて間違いありません。

年金

年金方式で受け取る場合は、雑所得である公的年金と合算した上で税金の計算をすることになります。年齢や収入の合計額によって控除額が変わり、これを超えた分が課税対象となります。

税金の面で見ると、一時金受け取りの方が有利です。勤続年数に従って非課税額が増えるので、税金がかかることなく大きな金額を受け取ることができます。ただし、年金方式には運用益が加算されるため、それらをトータルで考えてどちらが得なのか判断することが重要になります。

退職年金の受取額の相場について

退職年金とは、企業が従業員に対して支払う年金のことです。全ての人がもらえる訳ではなく、退職年金がある会社に定年まで勤めた人がもらえるというのが一般的です。退職年金がある会社は全体の4割ほどですが、大企業に限れば8割ほどの会社が退職年金を設けています。

退職年金がある場合も、退職一時金の代わりに退職年金がもらえるというところがあったり、退職一時金とは別に支給されるというところがあったりと会社によって条件がまちまちです。その点も併せて調べておく必要があります。

以下は、少し古いデータですが、退職金制度の給付方法別の退職金目安です。

 
勤続年数 給付制度
退職一時金のみ 退職年金制度のみ
20~24年 661 925
25~29年 756 1181
30~34年 1457 1691
35年以上 1567 2110

(単位:万円)

厚生労働省「平成25年 就労条件総合調査」

退職年金の受取額は様々な要素が組み合わさって決まるため、一概にどれくらいになるとは言えません。受取額を左右する要素として挙げられるのが給付利率と受け取り年数です。

給付利率は受け取る間に付く利息のことです。給付利率が高ければそれだけもらえる額が増えることになります。ただし、近年では引き下げられることが多くなっている要素でもあります。

退職年金の受け取りで重要なのが、終身か否かという点です。終身年金の場合は長生きすればそれだけたくさんのお金を受け取ることができます。

転職するときの受け取り方

一昔前であれば、最初に入った会社に定年まで勤めるというスタイルが一般的でした。しかし、近年では転職が珍しいことではなくなっており、退職金の扱いも変わってきています。

自己都合退職は退職金が少ない

まず、会社を辞める際に必ず退職金がもらえる訳ではないことを知っておく必要があるでしょう。退職金は法律で定められた制度ではないため、払わなくても会社が罰せられる訳ではないからです。

定年まで勤めることなく会社を辞める際は、定年まで働く場合に比べて退職金の額は少なくなります。また、会社都合退職よりも自己都合退職の方が退職金の金額は少なくなります。

20代や30代で退職金をもらったとしても、その額は非常に小さなものであり、一度支払われて終わりです。

確定拠出年金制度

ですが、退職するときに受け取るのではなく、将来に年金として受け取る方法があります。それが確定拠出年金です。ポータビリティという仕組みがあるため、60歳まで運用したり追加の拠出を行うことで、退職金を増やしていくことができます。

確定給付付企業年金では、20年以上加入すれば60歳まで受け取りを猶予し、その後年金として受け取る選択肢が生まれます。どちらも企業が採用している必要があるため、転職の際は調べてみると良いでしょう。

まとめ

退職金の受け取り方を考えるときは、まず働いている会社の規定を確かめる必要があります。選択肢があることを確かめてから、どのように受け取るか検討していきましょう。

単純にどの受け取り方がいいと決めることはできません。退職後の生活や受取額と税金のバランスを考えた上で、自分に合った受け取り方を選ぶことが重要です。