所得税は年金にもかかる?所得税がかかるケースなどを解説

公的年金は多くの人にとって老後の大切な収入のひとつですが、そこでは所得税との関係が時折問題になってきます。はたして、公的年金に所得税はかかるのでしょうか。公的年金に所得税がかかる場合の条件や計算方法について、わかりやすくまとめました。

所得税と公的年金の基本知識

所得税という名称を知っている人は多くても、具体的にどういったものかを知っている人は案外少ないのではないでしょうか。所得税と年金に関する説明をする前に、まずは基本的な知識を身に付けておきましょう。

所得税とは?

所得税とは『所得に応じて支払う税金』です。所得の種類に応じて以下の10種に分類されています。この10種類はそれぞれ課税所得金額の計算式が違います。

  • 給与所得…会社員の給料やボーナスなど
  • 不動産所得…不動産の賃貸による所得
  • 事業所得…自営などの所得で他の所得に該当しないもの
  • 配当所得…株式など投資による配当
  • 退職所得…退職金など
  • 利子所得…預貯金から生じる利息
  • 譲渡所得…資産の売却による所得
  • 山林所得…山林の木々を売却した際の所得
  • 一時所得…懸賞金の払い戻し、生命保険の返戻金など、事業による所得以外の一時的な所得
  • 雑所得…上記のいずれにも該当しない所得

公的年金は上記10種類のうち『雑所得に該当』します。

公的年金にはどんな種類がある?

公的年金給付には、以下の3種類があります。

  • 老齢年金…別名は退職年金。基本的に65歳以降支給される年金で、繰上げや繰下げも可能
  • 障害年金…公的年金加入者が障害者となった時に支給される年金。障害基礎年金は障害等級1級または2級が対象、障害厚生年金は障害等級1~3級に該当すれば支給
  • 遺族年金…被保険者または老齢年金受給資格者が亡くなった際に、遺族が受け取ることができる年金。支給対象は、加入していた年金が基礎年金か厚生年金かで違う

加入していた年金が、基礎年金・厚生年金のどちらであるかによって支給額は変わってきます。

所得税非課税の年金と課税対象の年金

雑所得も所得にあたるので所得税の課税対象となるのが一般的ですが、老齢年金・障害年金・遺族年金のうち、所得税の課税対象となるのは老齢年金です。障害年金と遺族年金の所得税は、非課税となっています。

年金の所得税は天引きで納付される

年金に所得税がかかる場合は、源泉徴収の対象となり、所得税が天引きされてから年金の振り込みが行われます。

年金にかかる所得税はどうやって決まる?

ここでは、所得税の課税額がどうやって決められているかについて説明をします。

年齢や受給額で課税されるかがわかる

所得税が課税されるかどうかは、老齢年金の受給年齢や受給額を見ればわかります。具体的な条件は、以下のとおりです。

  • 65歳未満の老齢年金受給者…年金受給額が108万以上
  • 65歳以上の老齢年金受給者…年金受給額が158万以上

つまり、老齢年金の『繰上げ受給』をした場合、所得税の課税額は高くなります。

(※繰上げ受給とは、65歳になる前に老齢年金を受け取ることです。全部繰上げは60歳から、一部繰上げは対象年齢になってから希望できますが、受給額は減額されます。)

各種控除額や税率が重要な計算式

所得税は、老齢年金の受給額から各種控除額の差し引きに税率を掛けて算出します。各種控除の詳細は、日本年金機構のHPで『各種控除額一覧』をご覧ください。基本となる計算式は次のとおりです。

所得税 = (年金額 - 各種控除 )× 5.105%

5.105%の内訳は、所得税率5%に復興特別所得税率1.021%を乗じたものです。

(※復興特別所得税率…東日本大震災の復興財源確保目的で導入された税金制度です。平成25年1月1日から25年間適用されます。)

扶養親族等申告書は忘れず提出しよう

各種控除の中に『扶養控除』という控除がありますが、扶養控除を受けるためには『扶養親族等申告書』を提出する必要があります。扶養親族等申告書は、毎年日本年金機構から送られてきます。

もしこの扶養親族等申告書を提出しなかった場合、扶養控除を受けることができない上に税率が『所得税率10%×復興特別所得税率1.021%』で計算されることになってしまうので、注意が必要です。

年金受給者は確定申告は必要?

確定申告とは、所得税の過不足を精算して納税額を確定させる制度です。つまり不足があれば納税が必要であり、払い過ぎていれば還付金がもらえます。ここでは、年金受給者の確定申告についてまとめました。

収入が年金のみの場合は?

収入が公的年金のみの人は、年金所得から各種所得控除を差し引いても残額があれば確定申告が必要となります。ただし、次の項目で説明をする『確定申告不要制度』に該当する人は、確定申告不要です。

確定申告不要制度について

『確定申告不要制度』とは、年金受給者が確定申告を行う負担を減らすために設けられた制度です。確定申告不要制度の対象は、次に示す条件の2つとも該当する場合になります。

  • 公的年金等の収入金額の合計が400万円以下で、その公的年金が全て源泉徴収対象
  • 公的年金等以外の雑所得を含む所得が20万円以下

自分が該当者かどうか知りたい場合、まず『源泉徴収票の支払金額欄』を確認してください。複数ある場合は全て足して、合計金額が400万以下なら1つめの条件クリアです。

その上で、年金以外の所得がある場合はその所得も計算し、20万円以下であれば2つめの条件もクリアとなり、制度対象者であることがわかります。

確定申告不要でも、住宅ローンや高額医療費の支払いを行った関係で還付金が生じる場合など、確定申告をして還付金を受けることは可能です。

給与所得などがある年金受給者は?

年金を受給している中には、定年後の再雇用などで給与をもらいながら元気に働き続けている人もいるでしょう。この場合も、給与所得が年20万円以下であれば、確定申告不要制度にしたがって確定申告を行う必要はありません。

給与所得が年20万を超える場合は、確定申告が必要です。

まとめ

公的年金と所得税の関係をしっかり確認することで、老後の蓄えはかなり変わってくる可能性があること、おわかりいただけましたか?年金知識をきちんと身に付け、老後の毎日を楽しく余裕を持って過ごしましょう。