葬式をするとほぼ間違いなく発生する出費のひとつに『お布施』があります。お布施を納めることは知っていても、お布施に関する詳しい税務処理に関しては知らないことが多いのではないでしょうか?この記事では、お布施の申告などの実務的な処理方法について解説します。
目次
お布施とは?
『お布施』とは、葬式を行った時の僧侶に対する謝礼の気持ちを示すために渡す金品のことです。お布施は、お金を半紙に包むか白封筒に入れて渡すのが一般的です。
白封筒に水引は不要です。表書きも不要ですが『御布施』と書いても問題ありません。それをお盆に乗せて渡します。
仏教における六波羅蜜
お布施にはもうひとつの意味があります。それは仏教の『六波羅蜜』という修行の一環としての『布施』です。
『六波羅蜜』とは仏教における6つの徳目のことで、これを実践すれば煩悩が消え、悟りの世界に到達できるとされています。その6つの徳目とは以下の通りです。
- 布施(ふせ):人に施しを与えること
- 持戒(じかい):戒律を守ること
- 精進(しょうじん):絶えず努力すること
- 忍辱(にんにく):忍耐すること
- 禅定(ぜんじょう):心を静めること
- 智慧(ちえ):正しく判断し、真実を見極める力を持つこと
お布施を納めるという行為は一番上の徳目『布施』にあたります。またお布施はさらに以下の3つに分けられます。
- 財施(ざいせ):物品や金銭を与えること
- 法施(ほうせ):読経などによって仏法を聞かせること
- 無畏施(むいせ):恐怖や不安を取り除くこと
私たちがお寺に収めるお布施は『財施』にあたります。
お布施は相続税の控除対象になるのか
場合によっては高額になることもあるお布施は、相続税の控除対象になるのでしょうか?つまり、支払ったお布施の金額分を、相続財産の金額から差し引くことはできるのでしょうか?
『うちはお金がないから相続税は関係ない』と思っていても、土地や家などを含めると意外に財産が多く、相続税を課税されてしまうかもしれません。
お布施が相続税の控除の対象なら、相続税の節税効果が期待できます。
お布施で払った金額分の控除が可能
お布施は相続財産の控除対象です。申請すれば控除が認められ、支払う相続税を少なくできます。
控除可能な葬儀費用について
控除可能な葬儀費用は、お布施だけではありません。たとえば、以下のような費用が控除の対象です。
- 火葬や埋葬費用
- 遺体や遺骨の運搬費用
- お通夜や告別式にかかった費用
- 死体の捜索費用
- 僧侶への謝礼にかかった費用
お布施は一番下の『僧侶への謝礼』に分類されます。香典のお返しや墓地や墓石の費用、告別式以降の費用、法事の費用などは対象ではありません。
ちなみに相続税の申告は『故人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヵ月以内』に書類を提出する必要があります。忘れずに手続きを行いましょう。
領収書はもらえる
控除を受けるには領収書が必要です。お布施についても、お寺によっては領収書を発行してくれます。
たとえば、栃木県にある高庵寺は、お布施の領収書を必ず発行しています。高庵寺以外のお寺でも領収書を発行してくれることが多いようです。もし必要ならお願いしてみましょう。
自分で用意しよう
とはいえ、お布施の領収書をお願いするのは何となく気が引けるとか、お寺が対応してくれない場合もあるでしょう。
そういう場合でも、自分で領収書代わりのメモを作成して、相続税の申告の際に、税務署に提出すればOKです。
特に決まった書式はありませんが、必要な情報を丁寧にまとめた書類を作りましょう。必要な情報とは、お寺の名称や所在地、お寺の連絡先、お布施の金額、お布施を渡した日付などです。
情報が疑わしいと、税務調査が入る場合がありますので、正確に記入しましょう。
収入印紙は必要なの?
5万円以上の領収書には、基本的に印紙税が課税されるので、収入印紙が必要となります。とはいえ、お布施の領収書においては収入印紙は不要です。
印紙税は営業に関するものにだけ課税されるものであって、お布施は営業に関するものにあたらないからです。
お布施って確定申告できるの?
控除を受けるもうひとつの方法として、所得税の確定申告が挙げられます。
例えば、社会保険料や生命保険料、寄付金などは、毎年2月から3月に行われる所得税の確定申告に含めることによって控除を受けられます。
では、お布施として払った金額を申告して、所得税を減らすための控除を受けることはできるのでしょうか?
お布施は確定申告できない
お布施は、所得税の確定申告に含めることはできません。
お布施などの葬儀費用は、相続税の申告に含めることで控除を受けることになっているので、所得税など、他の税金の確定申告に含めることはできません。
まとめ
葬儀ではかなりの費用がかかります。葬儀にかかった費用の控除申請を行うことによって、相続税の節税効果が期待できます。お寺に納めるお布施に関して、税金とは関係ないように思われますが、そうではありません。
国の制度を上手に利用して、相続税の負担を減らすことをおすすめします。