弔辞の正しい読み方と書き方。マナーを押さえて心に響く弔辞を

故人を見送る大切な儀式である葬儀では『弔辞』が読まれます。『弔辞』という言葉はよく聞きますが、どのような内容がベストなのかご存知でしょうか。ここでは『弔辞』についての解説と作り方、それにまつわる礼儀作法などを紹介します。

葬儀で読む弔辞の基礎知識

『弔辞』とは、葬儀の際に、主に故人との関係が深かった人が最後のお別れとして読み上げる言葉を指します。

漢字の読みに注意。弔辞は何と読むのか?

『弔辞』は『ちょうじ』と読みます。弔は『弔い(とむらい)』、『辞』には言葉を述べるという意味があります。したがって弔辞とは、『弔い(とむらい)の言葉を述べる』という意味です。

弔事と慶事の違いは?

『弔辞』と同じ発音で、『弔事』という言葉があります。弔事は『弔う(とむらう)事』と読み、『死亡や葬式などのお悔やみ事』を指します。

一方『慶事(けいじ)』の『慶』は喜ばしいという意味で、『結婚や出産関連のおめでたい事』を呼びます。一字の違いですが、まったく反対の意味になりますので注意しましょう。

もし弔事と慶事が同時期に重なってしまった場合は、一般的には弔事にいくことを優先します。たとえば、結婚式に呼ばれていたその当日に、身内の葬式が重なった場合などです。

どちらも人生の一大事であり、大切な日ではありますが、故人とのお別れはその時だけしかできません。一方、『慶事』はあとからでもお祝いを述べることができ、埋め合わせができるので、『弔事』を優先します。

弔辞の作り方と注意点

弔辞を依頼されたら、快く引き受けるのがマナーです。弔辞を作る時にはどんなことに注意するべきでしょうか。一般的な構成は以下のようになります。

  • 故人への呼びかけ(故人を悼む)
  • 故人の人柄や業績、思い出などのエピソード
  • 遺族へのお悔やみの言葉
  • 別れや冥福を祈る言葉

弔辞は毛筆で巻紙に縦書きで記し、『弔辞』もしくは『弔詞』と表書きした『奉書紙』を左前にして包むのが正式な方法です。

便箋に薄墨の筆ペンやボールペンなどで書き、白封筒の表面に『弔辞』と書くだけでも構いません。不幸を繰り返す意味があるので二重封筒を避けます。

弔辞の専用用紙と上包みがセットになっているものも市販されています。最終的には遺族の手に渡るものですので、丁寧に書き記しましょう。袱紗(ふくさ)か風呂敷に包んで持参します。

使ってはいけない言葉

弔辞には使ってはいけない言葉があります。それは、これ以上の悲しみや忌み事が起きないようにするためで、縁起が悪い言葉や不吉な言葉は避けます。

たとえば、死や不幸などが繰り返して起こらないようにと、『繰り返し言葉』を避けます。『繰り返し言葉』には

  • くれぐれも
  • たびたび
  • 次々
  • 重ねがさね

などがあります。また、言葉じたいに不吉なイメージがある

  • 切る
  • 離れる
  • 迷う
  • 九・四(苦しい、死ぬの意)→よん・ここのつ、などに言い替える

なども避けるようにします。そのほか、死や不吉なことについて単刀直入な言葉は使わず、婉曲表現を使います。

  • 死んだ→お亡くなりになった・永眠された・逝去された
  • 急死した→突然のご不幸・急なことで
  • 生きているうちに→ご生前に・元気な頃
  • 悲しみ→哀悼・傷心

などの言葉に入れ替えるようにします。また宗派によっては『冥福』・『成仏』といった言葉は使わないため、事前に確認しておきましょう。

孫が読む場合の書き方

祖父母の葬儀で、子供ではなく孫が弔辞を読み上げる場合もあります。その時にはどのような内容がいいのでしょうか。

孫がまだ若い場合は、可愛がってもらった祖父母の思い出を語るだけでもいいでしょう。かしこまり過ぎる必要はありません。

時間は短くても構いません。本人の言葉ではっきりと、故人に話しかけるように読むのがポイントです。最後は「見守ってください」などとして、「孫(代表)〇〇〇」と締めくくります。

盛り込むべき内容

弔辞を誰が読むかで、盛り込む内容は異なります。親族の場合は主に感謝の気持ちや思い出を、友人の場合は故人の人柄や思い出、遺族への慰めの言葉で締めくくります。仕事関係の場合は、故人の経歴や業績、最後に遺族や親族を励ます言葉にします。

二人称を使用し、形式的な言葉ではなく自分らしい言葉で素直に読むことで、参列している人々の心を打ち、印象深い弔辞となります。

ただし、故人とはとても親しく何でも話せた仲であっても、故人の失敗談や遺族が少しでも不快に感じる内容は避けるようにします。

弔辞の長さも重要です。短すぎると素っ気ない感じになり、長すぎると遺族や参列者を疲労させてしまいます。ゆっくり読んで約3分ほど、長い場合でも5分以内にします。400字詰め原稿用紙で2枚~3枚(800~1000文字)を目安とします。

弔辞の読み方 

弔辞はいつ読まれるのでしょうか。弔辞はお通夜ではなく、『告別式』で読み上げます。

葬式のどの場面で読むのか

たいていの場合、通夜の翌日に『葬儀』が行われます。実は葬儀は、『葬儀』と『告別式』の2つの儀式から成り立っています。

『葬儀』とは、僧侶の読経のなかで、親族が故人を見送る宗教儀式のことを指します。そのあとに、参列者が故人を見送る儀式として『告別式』があります。

弔辞は、この告別式の始まりに読まれるのが一般的です。告別式にはたいてい司会者がおり、順番が来たら司会者からの指名があります。

読むときの作法

名前を呼ばれたら祭壇に進み、まず僧侶や遺族に、続いて遺影に向かい一礼します。弔辞を上包み(もしくは封筒)から出し、両手で持って読み始めます。

たいていの場合はマイクが用意されていますので大声を出す必要はありませんが、小さすぎる声は聞きにくいものです。故人に語りかけるように、静かにゆっくりと読んでいきます。

読み終わったら、弔辞の用紙を上包みに戻して祭壇に置き、遺影に一礼したあと、僧侶と遺族にも一礼して壇上から離れます。

御霊の正しい読み方

弔辞を読むときには、冒頭に使う決まり言葉がいくつかあります。

  • 〇〇さんの御霊にお別れのごあいさつを申し上げます
  • 謹んで〇〇さんの御霊前に申し上げます
  • 〇〇さんにお別れの言葉を申し上げます

などが代表的です。

最初の『御霊』は『みたま』と読みます。本来は神道で使われる言葉で、霊の総称のことを呼びます。冒頭につける『御』という文字は尊敬に値する時に使われる接頭語です。神聖な魂になってしまった故人を前にしての呼びかけなので、この言葉を使います。

2つ目の『御霊前』は『ごれいぜん』と呼びます。故人の『みたまの前にて』という意味です。霊前に置かれる供物や金品に対しても使われます。

この『御霊』や『御霊前』は、神道、仏教、キリスト教のどの宗派にも使えます。

まとめ

『弔辞』を述べるということは、つまりお葬式に赴くことで、親しい誰かがこの世を去ってしまったことを意味します。心情的にはなるべく避けたいことですが、故人とのお別れをする大切な儀式のひとつです。

もし『弔辞』を頼まれた場合は快く引き受け、適切で印象深い『弔辞』を捧げられるようにしましょう。