老後に安定した生活を送るために、年金は大きな支えになるはずです。その年金の情報が、年に一度『ねんきん定期便』として郵送されます。記載内容の正しい見方を知り、情報に漏れや誤りがないかどうかをチェックしましょう。
目次
自分の年金情報がわかる、ねんきん定期便
年金は基本的に20歳以降に納付が始まり、老後に受給することで一生付き合っていくものです。しかし、会社に勤めて厚生年金保険に加入していれば、保険料は毎月の給与から天引きされます。普段の生活の中で年金について考える機会を持たない方も多いでしょう。
ねんきん定期便は、そのような方にも年金について意識する機会を与えてくれます。ひいては自分の人生設計についても考える機会になります。
年に一度、誕生月に届く
ねんきん定期便は毎年、加入者の誕生月に届出住所宛に送られます。今では当たり前のように受け取っている通知ですが、平成14年までは加入者に対して本人の年金情報を通知する制度はなく、自ら問い合わせをしてきた加入者に対する照会応答しかありませんでした。
平成15年から一部の加入者を対象とする通知の制度ができて、平成21年4月に加入者全員を対象にした通知の制度が始まりました。自分の年金のことに主体的に関わる意識をもって、得られる情報を有効活用したいものです。
節目には封書で届く
ねんきん定期便は、封書で届くこともあることをご存知でしたか?もしかすると「一昨年はハガキで、去年が封書で、今年はまたハガキだった」という方もいるかもしれません。
ハガキで来るか封書で来るか、それは受け取る方の年齢が関係するのです。ねんきん定期便は、35、45、59歳の時には封書で届くことになっています。封筒の中にはいくつかの書類が入っていて、記載内容もハガキとは異なる部分があります。
ねんきん定期便に記載されている内容
ここからはねんきん定期便で確認できる内容について解説します。実はすべての年金情報が毎年確認できるわけではなく、年によって確認できない情報もあります。
また、どの年であってもねんきん定期便では確認できない内容もあります。確認できないものの例としては、加給年金や振替加算が挙げられます。
すべてのねんきん定期便に記載されている内容
年齢にかかわらず、毎年確認できる内容はどのようなことでしょうか。前年と比較して増えていく『年金加入期間』や『保険料納付額』などがあります。
これまでの年金加入期間
これまでの年金加入期間は毎年確認することができます。年金加入期間の表には、国民年金、厚生年金保険、船員保険の加入月数(未納月数を除く)と合計期間、『合算対象期間』が記載されています。
年金の受給には、基本的に120月以上の『受給資格期間』が必要です。経済的に厳しいなどの理由で保険料を納付できない場合は、申請すれば『免除』されることもあり、受給資格期間に算入されます。ただし、将来の年金受給額は全額納付の場合の1/2になります。
120月に満たない場合は、合算対象期間も受給資格期間としてみなすことができます。合算対象期間は年金額には反映されません。
年金加入期間の表の中で、年金加入期間と合算対象期間を合わせた『受給資格期間』の欄が120月以上になっていれば、年金を受給できるということが分かります。
これまでの保険料納付額
これまで納付してきた国民年金保険料と厚生年金保険料の被保険者負担額、それぞれの金額とその合計額も記載されています。
厚生年金保険料は一般厚生年金被保険者期間、公務員厚生年金被保険者期間、私学共済厚生年金被保険者期間ごとに金額が分けて記載してあります。毎年増えていく累計額を見ると、年金への関心も高まっていくのではないでしょうか。
最近の月別状況
ハガキの場合は最近13か月分の月別の納付状況、封書の場合はこれまでのすべての期間の月別の納付状況を確認できます。
納付済み、未納、確認中、全免、猶予、付加などと納付状況が表示されます。『全免』は全額免除、『付加』は付加保険料の納付を表します。
50歳未満と50歳以上で記載内容が変わる
50歳未満では『これまでの加入実績に応じた年金額』の項目がありますが、50歳以上になると『老齢年金の見込額』に変わります。
50歳未満ではこれまでの加入実績で年金額が記載されていますが、50歳以上になるとこれまでの加入実績だけではなく、現在の給与のまま納付を続けていったと仮定した上で受給見込額を試算して、より詳しい年金額が記載されるのです。
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50歳未満のねんきん定期便の見方ポイント

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50歳未満のねんきん定期便の見方を見ていきましょう。将来の受取額について、詳細にイメージできる情報ではないことに留意しましょう。
加入実績に応じた年金額
50歳未満の場合、これまでの加入実績によって年金額が試算され、『老齢基礎年金』と『老齢厚生年金』それぞれの額と合計額が記載してあります。
『これまでの加入実績に応じた年金額』が表示されていない場合は、同月内に重複した年金加入記録があったり、厚生年金保険に統合されていない農林共済組合の加入記録があったりするという理由が考えられます。近くの年金事務所に問い合わせましょう。
これまでに納付した保険料で算出
50歳未満ではこれまでに納付した保険料から年金額が算出されています。現時点での額なので、将来受け取れると予想される金額とはまったく異なります。
40代までの方は、年金の受給が開始するときに、今のねんきん定期便に記載されている金額しかもらえないというわけではないことを覚えておきましょう。
ただ、長期的な人生設計を考えるときなど、将来自分はどれくらいの額の年金をもらえるのか知りたい場合もあるでしょう。そのようなときには、『ねんきんネット』で将来受け取れる年金額の試算ができます。
ねんきんネットの『かんたん試算』なら、現在と同じ条件で60歳まで年金制度に加入し続けるという設定で、年金額を試算できます。『質問形式で試算』や『詳細な条件で試算』では、より実際に近い予想額が算定されます。
裏面の月別状況も忘れず確認
裏面には月別の納付状況も記載されています。実際の納付状況と違いはないか確認しましょう。もし違っていれば、将来受け取る年金額が少なくなる可能性があります。
年金記録に間違いがある場合、厚生労働省に対して年金記録の訂正請求ができます。ただし、国家公務員、地方公務員、私立学校の教職員であった期間は訂正請求の対象となりません。
訂正請求の受付は近くの年金事務所で行うことができます。訂正請求は関連資料や関係者の証言、周辺事情などに基づいて総合的に判断され、認められるか否かが決まります。
できるだけ早い段階で気付いた方が、資料も記憶も残っている可能性が高いです。毎年、納付状況の記録を確認することを習慣にしましょう。
老後の国民年金や厚生年金を受け取るために『年金手帳』は必要不可欠です。しかし年金手帳が一体どんなものか良く分からないという人も多いのではない...
50歳以上のねんきん定期便の見方ポイント![]()
50歳以上のねんきん定期便の見方を見ていきましょう。50歳未満とは違い、老齢年金の受取額について、実際のイメージがしやすくなっています。ただし、これから先の自分の状況次第で大きく変わる可能性があることには注意が必要です。
老齢年金の年金見込額
50歳以上では、老齢年金の見込額について、老齢基礎年金と老齢厚生年金それぞれとその合計を記載してあります。
国民年金の受給は65歳からですが、老齢厚生年金は当分の間、60歳から64歳まで特別支給があり、年齢ごとに支給額が異なる場合があります。そのため、年齢ごとに区分して表記されています。
『老齢年金の見込額』が表示されていない場合は、下記のようなケースが考えられます。年金事務所や街角の年金相談センターに問い合わせましょう。
- ねんきん定期便に表示している受給資格が120月に満たない
- 同月内で重複している年金記録がある
- 旧三公社(JR、JT、NTT)共済組合または旧農林組合の加入期間が240月以上ある
今のままで60歳になった場合
老齢年金の見込額は、今と同じ条件で60歳まで継続して加入していると仮定した場合の額が記載されます。そのため、今と条件が変わるようなことがあれば、実際の年金額は当然増減する可能性があります。参考程度に考えておきましょう。
裏面に保険料納付額と月別状況
ねんきん定期便の裏面には保険料納付額と月別状況などが記載されています。50歳未満では保険料納付額が表(おもて)面に記載してありましたが、50歳以上では表(おもて)面で老齢年金の見込額の表にスペースを使うのに伴い、保険料納付額が裏面になっています。
月別状況では50歳未満と同様、納付状況の記載に誤りがないかを確認し、誤りがある場合には近くの年金事務所で年金記録の訂正請求の手続きを行いましょう。
35、45、59歳に届くねんきん定期便の見方
35、45、59歳の年に届く封書のねんきん定期便では、より詳しく自分の年金情報を知ることができます。
ねんきん定期便はもちろん毎年確認すべきですが、節目の35、45、59歳の年は特に力を入れて確認作業をしましょう。
全期間の加入内容が記載されている
封書のねんきん定期便には下記の通り全ての期間の加入内容が記載されています。
- 年金加入期間
- 年金加入履歴
- 厚生年金保険における標準報酬月額などの月別状況(厚生年金保険の加入履歴がある人のみ)
- 国民年金保険料の納付状況(国民年金の加入履歴がある人のみ)
また、35、45歳の方はこれまでの加入実績に応じた年金額、59歳の方は老齢年金の年金見込額も記されています。
年金加入記録回答票も同封されている
封書のねんきん定期便には『年金加入記録回答票』が同封されています。年金加入記録回答票は、送られてきた年金加入記録に漏れや誤りがある場合に提出します。訂正がない場合は提出の必要はありません。
また、年金加入記録の確認方法などを解説するパンフレットも同封されていて、確認方法が分かりやすくなっています。
ねんきんネットならいつでも記録を確認可能![]()
『ねんきんネット』は、これまでの年金記録や年金見込額をインターネットで確認できるサービスです。
利用するには登録が必要ですが、ねんきん定期便のように年に一度しか確認できないわけではなく、いつでも手軽に年金記録を確認することができます。常に最新の情報を得られるのも魅力です。
利用できる主なサービス
ねんきんネットでは、年金見込額、年金記録、年金振込通知書(年金受給者の人が対象)、追納・後納等可能月数と金額など、各種項目の確認ができます。
また、日本年金機構に提出する各種届出書を簡単に作成することができます。自動で反映できる情報については入力の手間が省けますし、入力項目のエラーもチェックしながら作成できて便利です。
電子版の『ねんきん定期便』を利用する場合、ねんきん定期便の郵送を希望しないという選択もできます。郵送のコストが省け、紙を使わずに済むのでエコにもつながるというメリットがあります。ただし、35、45、59歳の節目の年には、封書が郵送されます。
サイトへのログイン方法
ねんきんネットの利用には、登録が必要です。日本年金機構のサイトにアクセスし、『ねんきんネット』のバナーをクリックします。
ねんきんネットのページに飛んだら『新規ご利用登録』をクリックします。すると、申請用ページに移行するので『ご利用登録』をクリックして、画面の案内通りに登録を進めます。
ねんきん定期便に記載のアクセスキー(17桁の数字)があれば、ユーザIDをすぐに取得できて、スムーズに登録できます。アクセスキーの有効期限は、ねんきん定期便到着後、3か月です。アクセスキーがない場合は、登録後5日ほどでユーザIDが郵送されてきます。
年金手帳に記載してある『基礎年金番号』も必要になるので、登録前に調べておきましょう。登録後は、ユーザIDとパスワードでログインし、サービスが利用できるようになります。
スマホでも一部の機能に対応
スマホ版のねんきんネットも用意されており、ねんきんネットの一部の機能を利用することができます。パソコンを持っていなかったり利用できなかったりするときに便利です。
スマホで利用できる機能は下記の通りです。
- 利用登録
- 年金記録の一覧表示
- 年金見込額試算
- アンケート回答
- お知らせの確認
- 各種設定変更(パスワード変更、メールアドレス登録、サービス利用停止依頼など)
ユーザIDとパスワードを登録していなければ、年金事務所でスマホから利用登録をすることもできます。その場で登録することによって、簡単にユーザIDとパスワードを登録できるので、便利です。
もし、ねんきん定期便が届かないときは
稀に「誕生月なのにねんきん定期便が届かない」という場合があります。ねんきん定期便は誕生日までに届くとは限らないので、誕生月の間は待ってみてください。誕生月を過ぎてもねんきん定期便が届かないときには、放置せずに対処しましょう。
まずは届出住所を確認
ねんきん定期便が届かない原因として最も多いのは、登録されている住所が異なっていることです。届出住所と現住所が異なっていないかを最初に確認しましょう。
住所が異なっていた場合、現住所に変更手続きが必要になりますが、届け出先は加入している年金の種類によって変わります。
国民年金の方は市区町村役場へ
国民年金に加入している方(国民年金第1号被保険者)は、お住まいの市町村役場の国民年金担当窓口で手続きを行いましょう。
厚生年金保険の方は会社へ
厚生年金保険に加入している方は、勤めている会社で手続きを行います。また、会社員の被扶養配偶者(国民年金第3号被保険者)は、配偶者の勤め先の会社へ届け出ます。会社の総務課などに問い合わせてみましょう。
海外在住者は個別で申し込みが必要
海外在住者は個別で申し込みをしないとねんきん定期便は送付されません。日本年金機構のサイトの『ねんきん定期便お申し込み』のページから手続きを行いましょう。ちなみに、このページは海外送付専用の窓口で、日本国内には対応していません。
申し込みからねんきん定期便が届くまでは3か月程度かかり、場合によってはもっと時間がかかる場合もあります。
ねんきん定期便以外で年金記録の確認をするには、ねんきんネット以外に『ねんきんダイヤル』という電話案内を利用する方法もあります。また、帰国した際に、全国にある年金事務所窓口で確認することもできます。
まとめ
ねんきん定期便には、将来自分が受け取る年金について大事な情報が記載されています。内容に誤りがないかを確認することはもちろんですが、年金の納付状況や予測される受給額を把握し、老後の生活について考えてみることも大切です。
老後の資金について早めに考え行動することは、安定した人生を送るために良いことです。今からできることはやっておこうと、現在の生活を見直すことにつながるかもしれません。次の誕生月にねんきん定期便が届いたら、ぜひ開いて内容を確認してみてください。