年金の受け取り方について。試算方法や支給日を易しく解説

公的年金の受け取り時期や受け取り方、試算方法について解説します。日本では65歳から年金受け取りが可能ですが、高齢化社会が進む今後は段階的に引き上げられていく可能性があります。また自分が受け取れる見込額を知ることは非常に重要です。

年金の受け取り年齢は65歳から

年金というと、定年退職した60歳から受け取れるというイメージが強いのではないでしょうか。

高齢化に伴い、年金の受給時期が段階的に引き上げられています。それに伴い「自分はいつから年金がもらえるの?」と混乱する人も少なくありません。受給の条件や時期について詳しく解説します。

老齢基礎年金と老齢厚生年金

年金には、『老齢基礎年金』と『老齢厚生年金』の2種類があります。

『老齢基礎年金』は、『国民年金』や『厚生年金』の保険料を納めた人が受け取れる年金です。

一方、『老齢厚生年金』は会社に勤め、『厚生年金』に加入した場合に受け取れる年金のことです。年金額は加入期間や給与によって算出され、年金受給時には、『老齢基礎年金』に上乗せして給付されることになります。

このように、厚生年金加入者は、基礎年金加入者よりも、多くの年金がもらえる仕組みになっています。国民年金のみに加入している人は第1被保険者、厚生年金に加入している人は第2被保険者と規定されています。

老齢厚生年金を受け取れる条件

『老齢厚生年金』は会社で厚生年金を納めていた人が受け取れる年金ですが、受取額や期間などは個人によって異なります。

平成29年8月から『国民年金+厚生年金』の納付期間が10年以上であれば、65歳から『老齢厚生年金』が受給できるようになりました。それ以前は、納付期間の条件が25年以上だったため、受給者の範囲がだいぶ広がったことになります。

年金の繰り下げ繰上げ受給も可能

公的年金を満額で受け取れるのは65歳からですが、早めに年金を受け取りたいという人のための『繰り上げ請求』や、年金受給は遅くてもよいという人のための『繰り下げの申し出』が設定されています。

『繰り上げ請求』は、満60歳から受給が可能で、支給率は満額の70%~となります。しかし、一度繰り上げ請求を行うと、一生減額された金額での受給となりますので注意が必要です。

一方、『繰り下げの申し出』をすると、増額された年金額で受け取れます。『繰り下げの申し出』をしたときの増額率は、66歳0ヵ月~66歳11ヵ月で8.4%~16.1%、67歳0ヵ月~67歳11ヵ月で16.8%~24.5%となっています。

経済状況や体調などを考慮して、年金の受け取り時期を調節しましょう。

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年金の受取額を試算したいなら

上記でも述べたように、実際の年金受取額は個人によって違います。今後は、年金制度が変わっていく可能性もありますが、今の段階で受取額の目安を知っておくことは、将来的にも安心ができます。

「年金受給はまだまだ先のこと」と思わずに、見込額を計算して将来設計をしてみてはいかがでしょうか。

ねんきんネットなら簡単

年金の見込額を確認するときは、日本年金機構のホームページ内にある『ねんきんネット』が便利です。自分がこれまでに納めた年金の記録などもチェックできるので、保険料の支払い漏れを防げます。

利用対象者は、『基礎年金番号を持っている人』で、ユーザIDを取得し登録が完了すると、24時間いつでもパソコンやスマホ上で確認ができます。

尚、年金の見込額は、『簡単試算』の他に、様々な条件を選択して試算する機能があり、より詳細に算出することが可能です。

ねんきんネットでチェックできるのは以下の項目になります。

  • 年金記録の確認
  • 年金見込額試算
  • 追納・後納等可能月数と金額の確認
  • 年金支払いに関する通知書の確認
  • 届書作成方法

ねんきんダイヤルからでも申し込みできる

パソコンやスマートフォンを持っていない人は、『ねんきんダイヤル』で『年金見込額の試算の郵送』を申し込んでみましょう。申込みが混み合っている場合、試算結果が届くまで3週間以上を要することがあります。

また、共済組合が支給する年金の見込額は試算できませんのでご注意下さい。

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年金の受け取り方

年金は65歳になれば、自動的に振り込まれるものではありません。手続きの仕方や、注意点などについて説明します。

年金は自動的に振り込まれない

年金の支給は65歳になった翌月から口座に振り込まれる仕組みですが、事前に手続きをしなければ支給されることはありません。

この『年金請求』の手続きには数カ月かかる可能性があり、提出する書類も多数あるので、余裕を持って準備しておく必要があります。

日本年金機構から書類が届く

年金支給年齢に達する3カ月前に、日本年金機構から『年金請求書(事前送付用)』及び『年金の請求手続きのご案内』が送付されます。

万が一、送付されなかった場合は、日本年金機構に問い合わせをするか、年金事務所または街角の年金相談センターの窓口に備えつけてあるものを利用しましょう。

年金請求書を記入し、必要書類を添付したものを『誕生日になってから』提出します。

年金請求には、『年金請求書』に加え、以下の基本書類が必要になります。年金請求書の提出に合わせて、事前に準備しておくとスムーズに手続きができます。

  • 戸籍謄本、戸籍抄本、戸籍の記載事項証明、住民票、住民票の記載事項証明書のいずれか
  • 受取先金融機関の通帳等
  • 印鑑

この他、本人の状況によって必要な書類が異なります。

手続きは年金事務所か年金相談センターで

国民年金のみに加入している人(第1被保険者)は『市町村役場の窓口』に、厚生年金保険や共済組合等に加入したことがある人(第2被保険者)や第3号被保険者は『年金事務所』や『年金相談センター』に提出となります。

年金事務所は、全国に300カ所以上設置されていますので、お住まいの地域に手続き窓口があるはずです。

年金の受け取り月と日はいつ?

2カ月に一度、ATMや窓口が行列になる光景を目にすることも多いでしょう。年金の受け取り日は、個人が自由に設定することはできず、決まった月、決まった日に、指定した口座に振り込まれることになります。

偶数月の15日

年金は毎月振り込まれるわけではなく、年6回に分けて振り込まれます。受け取り月は、偶数月(2月、4月、6月、8月、10月、12月)で、受け取り日は15日です。

支払月には、その前月までの2カ月分がまとめて支払われます。つまり2月に支払われるのは、12月、1月の2カ月分ということになります。

偶数月の15日は、基本的にどこのATMも非常に混雑します。15日に必ず引き落とす必要がない人は、混雑を避けるために、15日以降に引き出すことをおすすめします。

受け取り日が土日祝の場合は

受け取り日が、土日祝の場合は、前日または前々日など平日に口座に振り込まれます。たとえば、15日が土曜日であれば、14日の金曜日に振り込みが完了するということになります。

年金受取口座はどこがおすすめか

年金受取口座は、一度設定すると、偶数月に自動的に年金が振り込まれることになります。口座を指定するときはより利便性が高く、お得なサービスがあるところを選びましょう。

やはり利便性が高いところが一番

年金の受け取りは、郵便局や金融機関など、基本的にどこの口座を指定しても問題がありません。しかし、その金融機関の運営が健全であることや、利便性が良いことは外せない条件といえるでしょう。

15日になると、どこの金融機関のATMも混雑します。まずは、お住まいの地域で、ATMや窓口の数が多く、引き出し時の手数料が無料あるいは安いところを選ぶのが前提といえるでしょう。

年金には手を付けず、貯蓄に回す場合は、利便性よりも金利を優先するのがおすすめです。逆に、生活資金として頻繁に口座を使う場合は、ATMの手数料が無料のところや、利便性が高い場所を選びましょう。

サービス内容で選ぶ

金融機関にとって、年金は安定的に資金を獲得できる重要な位置づけとなっています。そのため、各機関は受取口座を獲得するために、様々なお得なサービス(特典)を展開しているのです。

たとえば、地方銀行やJAバンクなどでは、特産品やギフトカードのプレゼントキャンペーンなどがあります。

また楽天銀行などのネットバンクでは、『楽天銀行口座での年金受取期間』中に3万円以上の公的年金受取が1回でもあれば、1カ月ものの円定期に優遇金利を適用するというサービスを行っています。

多くの金融機関では、手数料の無料化、割引などを積極的に採用し、受取口座の獲得競争は今後もますます激しくなることが見込まれます。各機関のサービス内容をこまめにチェックしておきましょう。

受取口座を変更した場合は届出が必要

年金の受取口座を変更したときは、『年金事務所』または『年金相談センター』に届け出る必要があります。届け出をせずに、年金の受け取り先だけの変更を行うと、トラブルが発生する可能性があるので注意しましょう。

届け出の方法については、『年金受給権者受取機関変更届』に必要事項を記入し、変更後の銀行の窓口で、預金口座の証明をもらいます。

年金事務所の窓口に直接行く場合、『通帳のコピー』を持参すれば、わざわざ銀行の窓口で、預金口座の証明をもらう必要はありません。

尚、日本年金機構では、住所が変わらないのに、むやみに年金の受け取り口座を変更することは好ましくないことを伝えています。金融機関の特典に乗せられて、頻繁に口座変更しないように気を付けましょう。

まとめ

将来受け取ることのできる年金額について調べておくと、将来設計が立てやすくなります。申請については、やや煩雑なところもありますが、自分からきちんと請求しなければ年金は振り込まれません。必要な手続きを忘れないようにしましょう。

また現在は年金受給の年齢は65歳となっていますが、超高齢化時代に突入した今、今後はますます年金受給が厳しくなる可能性があります。老後に備え、十分な貯蓄を備えておくのが賢明です。