仏教は宗派によって葬儀の一連の流れ、香典の書き方などが異なるので注意が必要です。曹洞宗の葬儀の仕方と特徴、費用の相場などについて詳しく説明します。自分が喪主になる時はもちろん、参列する際は相手の宗派に合わせたマナーを心がけましょう。
目次
他宗派と違う曹洞宗の葬儀の特徴
曹洞宗とは、鎌倉時代に日本に伝えられた中国の禅宗五家の1つで、『お釈迦様』をご本尊としています。仏式の宗派では浄土真宗が最多ですが、曹洞宗に属する人も少なくありません。
曹洞宗の葬儀が他の宗派と異なる点、及び特徴について解説します。
仏の弟子になる故人を送り出す
曹洞宗の葬儀は、『仏の弟子になる故人を送り出す』という目的があります。つまり、戒名と戒律を授かり、お釈迦様の弟子になるということです。
葬儀の前半は『授戒の儀式』、後半は『引導の儀式』が行われます。
『授戒の儀式』ではお釈迦様から与えられた戒法を戒師から授かり、故人は仏の弟子になります。そして『引導の儀式』では、導師が法語を語り、迷界から仏の世界へと故人を引導します。
祭壇には3つの掛け軸
曹洞宗の葬儀では、祭壇に『三尊仏』が描かれた3つの掛け軸が飾られます。この『三尊仏』とは、『お釈迦様(真ん中)』、曹洞宗の基礎を築いた『道元禅師(右)』と『瑩山禅師(左)』のことを指しています。
道元と瑩山は、曹洞宗における『両祖』であり、お釈迦様と両祖を合わせて『一仏両祖』とされています。
お坊さんが歌う御詠歌
葬儀の際、僧侶は『鈴(れい)』と『証(しょう)』という楽器と『撞木(しゅもく)』という法具を用い、『御詠歌』を歌います。これは『梅花流御詠歌』というもので、お釈迦様や両祖を讃える仏教の教えが歌詞になっています。
『梅花流御詠歌』は、昭和25年に道元禅師700回大戸遠忌を記念して生まれました。心が安らかになるようなメロディーで、通夜や葬儀時に限ったものではなく、お釈迦様の力添えをいただきたい時などにも歌われます。
賑やかに故人を送る葬儀の流れ
曹洞宗の葬儀は、他の宗派に比べ、盛大に且つ厳かに行われるのが特徴です。臨終から葬儀後までの流れを見ていきましょう。
臨終から葬儀後までの流れ
曹洞宗の式次第は、それぞれに意味があります。一連の流れは以下の通りになります。
- 剃髪
- 受戒(懺悔文・洒水・三帰戒文・三聚浄戒・十重禁戒・血脈相承)
- 入龕諷経(にゅうがんふぎん)
- 龕前念誦(がんぜんねんじゅ)
- 挙龕念誦(こがんねんじゅ)
- 引導法語(いんどうほうご)
- 山頭念誦(さんとうねんじゅ)
葬儀の前半は、剃髪の出家儀式を行い、罪を悔い改め、仏の弟子になる儀式が行われます。受戒の儀式が終わると、導師が入龕諷経(にゅうがんふぎん)を唱え、この間に参列者が焼香を行います。
挙龕念誦(こがんねんじゅ)は、邪気を払う儀式ですが、曹洞宗の葬儀が賑やかに感じるのは、3人1組で、太鼓や鐃祓(にょうはち)などの仏具を鳴らして行うためです。
最後に導師によって法語が読まれ、故人が悟りを開けるように祈願をして終わります。
通夜や葬儀のお経について
通夜や葬儀で唱えられる曹洞宗のお経は、ほとんどが日本語口語体となっています。
例えば、通夜では、お釈迦様が涅槃に入る前に説いた最後の教え『仏遺教経』が用いられます。
また葬儀の入龕諷経では、観音様の慈悲の心を唱えた『大悲心陀羅尼(だいひしんだらに)』がよまれ、『十仏名(じゅうぶつみょう』と『回向文(えこうもん)』という2つのお経を唱えます。
挙龕念誦では、邪道への堕落を止め、浄土へと導く『大宝楼閣陀羅尼(だいほうろうかくだらに)』を導師が唱えます。
用意したい葬儀費用の相場
曹洞宗の葬儀を行う際は、どのくらいの費用を用意すべきなのでしょうか。僧侶にお渡しする『お布施』や『戒名』にかかる費用についても説明します。
お布施や戒名の相場
葬儀費用は、基本的な葬儀に関わる『葬儀一式費用』と参列者のおもてなしにかかる『飲食・接待費』、そして僧侶にお渡しする『お布施』で構成されています。
宗派ごとに金額が代わってくるのは『お布施』の部分です。
曹洞宗の枕経、通夜、葬儀のお布施の相場は、およそ15万~50万前後となっています。挙龕念誦では、お坊さんが3人1組で経を読むため、他の宗派または1人の時よりもお布施が高くなってしまう傾向があります。
また曹洞宗の場合は、『戒名のランク』に応じた費用が発生し、30万~100万ほどが相場となっています。
地域や菩提寺との関係の深さによって金額は変わってきます。お布施の目安が分からない時は、僧侶に直接相談してみるのもよいでしょう。
曹洞宗の葬儀に参列する際のマナー
葬儀に参列する際は、相手の宗派に合わせるのが常識です。曹洞宗には他の宗派にはない葬儀のマナーがあります。2つのポイントを解説しましょう。
お香典の表書きは御仏前
香典は、他の仏式葬儀と同様に、一般的な不祝儀袋(香典袋)を使用します。他の宗派と異なる点は、表書きに『御霊前』ではなく、『御仏前』と書くことです。
他の宗派は、四十九日を過ぎると仏の元に向かうという考えがありますが、禅宗である曹洞宗には、『浄土』や『極楽浄土』に行くという考えがありません。そのため、死後は全て『御霊前』ではなく『御仏前』なのです。
お焼香の回数は2回
宗派別にお焼香の回数は異なります。曹洞宗は2回で、お線香の場合は1本です。一般的なお焼香の手順は以下となります。
- 合掌し、一礼する。
- 右手の親指、人差し指、中指で香をつまみ、額の上で軽く押す
- 香を炭の上にくべる
- 2回目は、1回目よりも少量の香をつまみ、香炉に投じる
- 合掌し、後ろに少し下がり、一礼する
まとめ
葬儀の時になって初めて、自分の宗派の儀式を知るという人も少なくないでしょう。曹洞宗には他の宗派と異なる点が多くあります。葬儀の流れだけでなく、中心となる宗派の考え方についても学んでおくと、故人をきちんと送り出せるでしょう。