財産を相続するときに気になることといえば、やはり相続税でしょう。相続税には基礎控除のほかにも様々な非課税措置があるので、自分に当てはまる控除を有効活用することが節税につながります。今回は、相続に関する節税対策について紹介します。
目次
基本的な非課税枠はいくらまで?
莫大な税金を払わなくてはならない印象の強い相続税ですが、財産にかかる相続税を全て納めなければならないというわけではなく、税金が課せられない『非課税枠』が存在します。では、基本的な非課税枠は具体的にいくらになるのでしょうか。
まずは、基本的な非課税枠の限度から把握していきましょう。
基礎控除額の計算方法
基礎控除とは、相続税の中の非課税枠にあたる部分を指します。つまり、この範囲内の相続金であれば税金を支払わなくてもよいという枠組みです。
非課税枠は相続人の人数によって左右されるため、基礎控除額を計算するときには何人の相続人がいるのかということを知っておかなくてはなりません。
平成27年から適用されている基礎控除額の計算式は、『3000万円+(相続人数×600万円)』です。この計算式の答えよりも実際の相続金が少なければ、相続税を支払わなくても問題ありません。
相続人数は養子縁組で1人だけ増やせる
相続税の非課税枠は、相続人が多ければ多いほど大きくなります。つまり、相続人数が多いほど相続税の負担が減るということになります。
ただし、この仕組みを不当に利用して相続人を増やすためだけに養子縁組がなされることのないように、法定相続人の頭数に入れることができる養子の数には制限が設けられています。
法定相続人として認められる養子の数は、被相続人に実子がいる場合は1人まで、また被相続人に実子がいない場合でも2人までとされています。
いずれも税負担を減らす目的による養子縁組と見なされた場合は、その養子は相続人として認められません。
未成年者と障害者の場合は控除あり
相続人が未成年者や障害者である場合は、相続税額の中から一定の金額が差し引かれます。未成年者の場合は満20歳になるまで、また障害者の場合は85歳になるまでの年数1年につき10万円が、相続税額から控除として引かれます。
未成年者控除が受けられるかどうかは、相続を受けたときの年齢や住所、国籍などの条件によって判断され、全ての条件を満たしている場合のみ、控除が受けられます。
障害者控除額は85歳になるまでの年数1年につき10万円が基本ですが、特別障害者の場合は20万円が控除額として認められます。
終活をするにあたり、気になるのが相続税のことです。できるだけ残された家族に負担をかけたくないと考える人が多く、対策としてよく行われているのが...
家族にかかる相続税を節税するには?
誰でも大切な家族にはできるだけたくさんの財産を残したいと思うものですが、その一方で相続税が膨らむことを不安に感じることもあるでしょう。家族にかかる相続税を抑えるためにはどうしたら良いのでしょうか。
配偶者控除申請で1億6,000万円まで非課税
家族の中でも特に非課税措置が優遇されているのが、被相続人の配偶者です。配偶者は、相続税の申告手続きを踏むことで配偶者控除を受けることができます。
配偶者控除を受けると、1億6,000万円または配偶者の法定相続分相当額のいずれか金額が高い方より相続金額が低ければ、相続税を支払う必要がありません。
子供や孫への生前贈与
子供や孫にかかる相続税の負担を減らすためには、生前贈与という方法が効果的です。生前贈与とはその名のとおり、生きているうちに財産を贈与することを指します。
もちろん、贈与にも贈与税はかかりますが、こちらは毎年1人につき110万円の控除を利用することができます。そのため、相続金にまわす分の財産を数年に分けて子供や孫に贈与していけば、相続税の負担はグッと減ります。
家族にかかる相続税を節税するためには、贈与税と相続税、それぞれの控除をうまく組み合わせることが大切です。
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生前贈与の注意点
生前贈与に際して気をつけなければならないのは、特に孫に財産を贈与する場合、本人がまだ若いということを理由にして実際の財産管理は自分が行ったり、財産を贈与することを本人に知らせなかったりするパターンです。
贈与はお互いの合意があって初めて成立する契約であるため、きちんと本人に贈与する旨を伝え、管理を任せる必要があります。
また、相続開始前3年以内に贈与されたものは生前贈与と認められず、相続として扱われます。そのため、相続税の課税対象としたくないものは、なるべく早いうちに生前贈与を実行した方が賢明です。
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みなし相続財産の非課税枠について
死亡したことで入ってくる保険金や退職金のように、被相続人が死亡したことによって相続人が得る財産のことを、みなし相続財産といいます。
みなし相続財産は被相続人が所有していた財産ではありませんが、他の財産のように相続税の対象となります。
生命保険と死亡退職金は一定金額まで非課税
代表的なみなし相続財産である生命保険や死亡退職金などは、その保険料の全部または一部を被相続人が支払っていた場合、相続税が課される対象となります。
ただし、一定金額までは非課税とされていて、その非課税限度額は『500万円×法定相続人数』の計算式で求めることができます。
ただし、法定相続人以外の人が死亡保険金を受け取る場合は、非課税措置は適用されません。
みなし相続財産の非課税での注意点
生命保険金や死亡退職金などのみなし相続財産は、何の気なしに受取人を配偶者にする人が多くいます。しかし、長い目で見たときに少しでも多くの財産を残すためには、受取人を子供にしていた方が良い場合もあります。
なぜなら、みなし相続財産には非課税枠があるといっても、そこに収まりきらなかった場合は相続税がかかるからです。
被相続人から配偶者へとみなし相続金の相続がなされ、時が経ってその子供がさらに相続を受けるとなると、再びその財産が相続税の課税対象となってしまいます。
こうした課税による財産の目減りを最小限に抑えるためにも、みなし相続財産の受取人は慎重に設定することが重要です。
土地や住宅を相続した場合の相続税と節税対策
相続する財産は、お金だけとは限りません。土地や住宅など、金銭以外の財産を相続した場合は、どのように相続税が課されるのでしょうか。
土地や住宅も基礎控除額を超えたら課税対象
土地や住宅なども、もちろん相続税の課税対象です。これらを相続する場合、『3,000万円+相続人数×600万円』までが基礎控除額となり、この金額を超えると相続税を支払わなくてはなりません。
しかし、どれほど高額な不動産であっても、相続人数が多くなれば基礎控除額も大きくなり、かかる相続税も少なくて済みます。
また、その不動産が資産というよりは負債の要素が強い場合など、条件によっては相続税がかからないということもあり得ます。
土地の評価額を下げる方法
不動産の値段は、その時々や条件によって変化する評価額なので、相続税を抑えるためには、なるべく評価額を下げるように努めることが大切です。
一例として、土地にアパートを建てることが挙げられます。土地をそのまま相続するよりも、アパートが建っている土地を相続したほうが評価額は約20%下がります。
また、下記の条件両方を満たす場合は『小規模宅地の特例』により、一定の面積の土地の評価額を約50~80%下げることが可能です。
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被相続人か被相続人と共に暮らしている親族の事業用か居住用になっていた宅地など
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建物などの敷地となっている土地
生前贈与で贈与税の非課税制度を上手に活用
20歳以上の子や孫に向けて不動産等の高額資産を遺す場合、生前贈与の非課税枠についてより詳しく知っておく必要があります。
1人あたり年間110万円の控除は『暦年贈与』といいますが、これに対して、贈与財産が2,500万円以下であれば税金がかからず、2,500万円以上の場合でも一律20%の贈与税で済むという制度を『相続時精算課税』といいます。
これは、相続時に贈与されたものと相続したものの合計額に相続税がかかる仕組みで、一度こちらを選ぶと、それ以降再び暦年贈与を選ぶことはできません。
将来的に値上がりの可能性がある不動産には有効な制度ですが、暦年贈与で受けられる控除額と比べて、どちらを選んだ方がより支出が減るかを検討した上で決断することが重要です。
宅地や住宅などの金額が大きい財産を相続した場合、相続税がどのくらいかかるのか心配ではありませんか?配偶者の相続、住宅や宅地の相続では、相続税...
法定相続人や非課税措置を確認して賢く節税対策を!
相続税の基礎控除額は、相続人の数が多いほど大きくなります。家族にかかる相続税の負担を減らすためには、前もって相続人を確認したり、配偶者控除や未成年控除などの非課税措置の内容を把握したりしておくことがポイントです。
また、計画的に生前贈与を行っておくことも、相続税を最小限に抑える上で役立ちます。大事な家族に少しでも多くの財産を残すためにも、非課税措置を有効活用して節税対策を徹底しましょう。