家族に介護が必要となった場合、どの程度介護にお金がかかるのか、これまで介護の経験がない人にとっては全く未知の世界ではないでしょうか。そこで、要介護者が受けられる介護保険サービスや、毎月かかる介護費用の目安について紹介します。
目次
介護保険の基礎知識
『介護保険』という名称は聞いたことがあっても、実際にどのようなものか把握できていない方も多いのではないでしょうか。
まず、介護を受ける上で知っておく必要がある、介護保険についての基礎的な知識について解説します。
介護保険の自己負担額
介護保険制度では、40才以上の人は全員加入となり、毎月介護保険料を健康保険料と共に納める必要があります。
65才以上で要介護認定を受けた方、または40~64才で介護保険の対象である特定疾病で介護が必要と認定された方は、介護サービスまたは介護予防のための予防サービスを受けることができます。
介護保険が適用されると、こうしたサービスにかかる費用のうち、原則1割が自己負担、一定以上の所得がある方は2割負担となります。
要介護度によって介護費が変わる?
介護にかかる費用は、『要介護度』によって変動します。『要介護度』が重ければ重いほど介護の必要性が高くなるため、介護費も高くなります。
要介護度って何?
『要介護度』は、軽い順から要支援1・2、要介護1~5の7段階に分けられ、これは要介護認定の申請をして判断されます。
要介護認定とは、どの程度の介護が必要かを判断するために行われるものです。自治体の担当者による聞き取り調査などを元にコンピューターで判定した後、主治医の意見書などを『介護認定審査会』が判定して、『要介護度』を出します。
介護費用はいくらになるの?
身内に介護が必要となり介護サービスを受けるとなった場合、やはり介護にかかる費用は気になる点です。
要介護者の状態はもちろんですが、居住地や各家庭の事情などにより介護費用は変わってくるので、個人差も大きいといえます。
介護費用は年々増加傾向
介護にかかる費用は、毎年右肩上がりとなっていることが、厚生労働省による調査で明らかになっています。介護サービスにかかる費用を一部負担する介護保険制度でも、介護給付費は年々増加しています。
その理由として、高齢化が進み介護が必要な高齢者が増えていること、また介護を受ける期間が伸び、その分、介護負担が増えていることなどが挙げられます。
介護費用の月額の平均
生命保険文化センターが、過去3年間に介護を経験した人を対象として行った調査によれば、介護にかかった費用は、自己負担分を含めて平均月7万9,000円という額が算出されています。
ただしこれはあくまでも平均値で、月額10万円以上の介護費用がかかっている人が、全体の約3割もいたことも分かっています。
毎月かかる介護費用以外にも、在宅介護を行う場合は自宅のバリアフリー化のリフォーム費用や介護用ベッドなどの介護用品購入など、一時的にかかる費用もあります。それらの費用を平均すると、約80万円となっています。
家族に介護が必要となった場合、どの程度介護にお金がかかるのか、これまで介護の経験がない人にとっては全く未知の世界ではないでしょうか。そこで、...
有料老人ホームと在宅介護でいくら変わるか
介護には大きく分けて、有料老人ホームなどで行う『施設介護』と、自宅で行う『在宅介護』の2種類があります。
一般的には、介護職員によって24時間施設で介護を受けられる『施設介護』より、家族が自宅で行う『在宅介護』のほうが費用が安くなるといわれていますが、実際のところはどうなのでしょうか。
有料友人ホームの入居金と月額費の関わり
多くの有料老人ホームでは、入居時にその施設の終身利用権や前払家賃が含まれる『入居一時金』が必要です。入居一時金がゼロ円という施設もありますが、前払家賃の支払いがない分、月額費用が高くなることもあります。
そのため、初期費用が安い入居一時金ゼロ円の施設でも、長期間利用すればするほど、総費用が割高になる場合もあります。
入居一時金や月額費用は、施設の設備や立地、サービス内容などによって異なります。例えば、都心の一等地に建つ豪華な有料老人ホームでは、入居一時金だけでも数千万円、毎月の費用が30万円以上かかるところもあります。
また、有料老人ホームで毎月かかる費用は、家賃や食費、水道光熱費などの施設利用料だけではありません。おむつなどの消耗品やレクリエーションなどにかかる雑費、さらに医療費なども追加で必要になる場合があります。
月額の総費用としては、施設利用料プラス3~5万円は見ておいたほうがいいでしょう。
老人ホームを検討している人は、原則として要介護3以上あれば『特別養護老人ホーム』に入ることができます。資金に不安のある人でも入居できるうえ、...
在宅介護は安くなる?
有料老人ホームでの施設介護よりも、在宅介護のほうが大幅に介護費用を減らせるのでは、と考える方が多いかもしれません。しかし実際は、在宅介護でもそれなりの費用がかかります。
在宅介護にかかる平均費用は、要介護1で月3.3万円、最も重い要介護5で月7.5万円という数字が出ています。認知症の症状が重い場合、要介護4または5で月平均13万円ほどかかるともいわれています。
施設介護の場合にかかる費用と比べてみると、必ずしも在宅介護のほうが介護費用を大幅に安くできる、とは限らないことが分かります。
介護施設や老人ホームでは、慢性的な人手不足が続いています。高齢化に伴い、利用者が増加したことから、施設の数も十分とは言えず今は在宅介護を選択...
まとめ
介護にかかる費用は、基本的に『要介護度』によって大きく異なります。在宅介護であっても、要介護度が重かったり認知症の症状が重度になると、かかる費用は決して安くはなりません。
費用だけにとらわれず、要介護者の要望や家族の状況を加味して、ベストな介護方法を選択する必要があります。