サービス付き高齢者向け住宅は有料老人ホームとは違います。ですから、制度の違いを理解しておく必要があります。それぞれの特徴を詳しく解説するとともに、サービス付き高齢者向け住宅の事業者への国や地方自治体からの補助金制度についても紹介します。
目次
サービス付き高齢者向け住宅とは
サービス付き高齢者向け住宅は、『比較的体が自由に動かせる方を対象としている施設』です。
有料老人ホームとはサービスの形態は似ている部分がありますが、重度の病気や常に介護が必要な状態だと対応できない場合もあります。
2つの施設の違いを事前によく知っておきましょう。
有料老人ホームとの違い
『有料老人ホームは介護を目的とした施設』なのに対し、『サービス付き高齢者向け住宅は介護サービスも受けられる住居』です。
有料老人ホームは以下のような施設となっています。
- 24時間介護サービスを受けられる
- 入居・施設にいる間の費用は高額なところが多い
- 認知症や重度の病気にも対応している
- 介護サービスの費用が決まっている
- 外出する場合は届け出が必要
一方で、サービス付き高齢者向け住宅は以下のようになっています。
- 夜間は介護サービスを受けられない場合もある
- 住居扱いのため入居する際の費用や家賃が安い
- 認知症など重度の病気には対応していないところが多い
- 介護サービスは受けた分だけ支払うシステム
- 外出は自由
サービス付き高齢者向け住宅は、自由に外出することもできて家賃もそれほど高くないというメリットがあります。
介護保険料を支払ってはいても、いざ親の介護をするときにどのくらいの費用がかかり、どの程度自己負担しなければならないのか、ということまではわか...
ニーズは増加傾向
- 持ち家がないので住環境的に在宅介護が難しい
- 持ち家があってもバリアフリー化する資金がない
- 少子高齢化で子供による介護が難しい
- 住み慣れた土地で生活したいという人が増えている
- 老人ホームの数が不足している
以上の理由からサービス付き高齢者向け住宅のニーズは年々高まっています。
特に、持ち家がない、またはバリアフリーの設備が整っていない住まいに住んでいる高齢者世帯が多くなったことで、サービス付き高齢者向け住宅に引っ越すケースが増えています。
一定のバリアフリー化した住宅1の比率は持家で39.6%、民間賃貸で16.2%である。このように、現状においても高齢者向けの住まいは不足している
また、有料老人ホームの高額な入居費用を払うのが難しいことも、サービス付き高齢者向け住宅を選択する理由になっています。
住み続けるための費用が安いため、サービス付き高齢者向け住宅の需要が高まっているのです。
サ高住の建設や開業に役立つ補助金制度について
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サービス付き高齢者向け住宅を建てるには、通常の住宅よりコストが掛かります。手すりの取り付けや床の段差をなくすなど、高齢者が住みやすい環境にする必要があるためです。
そこで、事業者の金銭的負担を減らすために、国や地方自治体からの補助金制度があります。
(※サ高住とはサービス付き高齢者向け住宅の略です。)
国土交通省による補助金制度
国土交通省は、サービス付き高齢者向け住宅を建てるための補助金制度を設けています。補助金制度がサ高住の事業を始めるハードルを下げているのです。
基本的に以下のように事業者へ資金が補助されます。
- アパートやマンションを改修して利用する場合は1/3(1戸上限180万円)
- 新しく建てる場合には1/10(1戸上限90~135万円)
※ただし、新築で床面積が30平方メートル以上の場合は全戸数の2割のみ対象
しかし、月の家賃が30万円以上の場合や、必要以上に豪華な住宅は補助金制度の対象外となります。
平成30年度の変更点
平成30年度に国土交通省から補助金制度の変更がおこなわれました。主な変更点は以下の通りです。
- 25平方メートル以下の住宅の補助金を減額
- 現在ある住宅を改修して、サ高住に改築する際の補助金を一戸150万円から180万円に増額
- 物件を運営している事業者の公開を義務付け
- 消費税は補助金制度の対象外となった
新しくサービス付き高齢者向け住宅を建てる際の補助金が減額され、既存の建物を改修して利用する場合に多くの補助金を受けられるようになりました。
東京都の補助金制度
東京都では、サービス付き高齢者向け住宅を建てる際に、国土交通省の補助金制度にプラスしてさらに補助金がもらえるようになっています。
国の補助金制度を利用し、新しくサービス付き高齢者向け住宅を建てる際には、東京都からも建築費の1/10が支給されます。
さらに、地域密着型サービスを隣に建てる際などには以下の補助金も支給されるのです。
<地域密着型サービス事業所併設加算(20万円/戸)>
<入居者及び地域住民の共用リビング併設加算(10万円/戸)>
<夫婦世帯入居支援加算(20万円/戸)>
<木密事業等推進加算(20万円/戸)>
既存の建物を改修してサービス付き高齢者向け住宅にする際には、改修する費用の1/3(一戸上限150万円)が支給されます。
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補助金はどうしたら受けられる?
補助金を受けるには国が定める条件をクリアしなければいけません。そこで、補助金制度を利用するための要件を解説していきます。
補助金制度の申し込み要件
事業者がサービス付き高齢者向け住宅の補助金制度を申し込むためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 住居の広さが25平方メートル以上
- 高齢者が住みやすい住環境を整える
- 健康状況の確認や相談などのサービスの提供
- 入居者が安定して住み続けられる条件で契約
- 提供するサービスや運営している会社の情報をはっきり明示する
- 入居者へ契約の説明をしっかりする
- 入居者を誤解させてメリットを大きく見せる広告の禁止
- 行政の指導に従うこと
以上のように入居者が安心して住み続けられる環境を作ることが、補助金を受けるための条件となっています。
補助金を申請する方法とは
サービス付き高齢者向け住宅の補助金の申請方法は、以下のような流れとなっています。
- サービス付き高齢者向け住宅の登録を都道府県または、政令市、中核市に申請
- 審査に受かり登録通知の発行がされた後、補助金交付申請書を整備事業事務局に提出
- 整備事業事務局から事業内容の審査を受ける
- 審査に受かり整備事業事務局から交付決定通知書が発行される
- 工事に入る
- 工事のスケジュールなどを整備事業事務局へ報告しつつ工事を進める
- 整備事業事務局から工事完了後に再審査を受ける
- 工事に問題がないことを整備事業事務局が確認
- 審査により補助金額が確定
- 補助金の受け取り
(※政令市、中核市は国によって定められている大都市のことです)
まずは、サービス付き高齢者向け住宅整備事業事務局からの事前審査か、都道府県の審査に受からなければ補助金制度を利用できません。
ですから、サービス付き高齢者向け住宅の建設はきちんとした計画を立てて申請する必要があります。
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まとめ
サービス付き高齢者向け住宅は介護サービスも受けられる住宅です。有料老人ホームより安く住み続けることができ、ニーズが高まっています。
そのため、国からの補助金の他に都道府県によっても補助金の制度があり、事業者の負担を減らすことが可能です。
サービス付き高齢者向け住宅の建設・工事で補助金を受けるには、国が定める様々な条件をクリアすることが必須となります。金銭的負担を減らすためにもしっかり理解しておきましょう。