会社で年末調整をしてもらっていたという方は、定年退職後年金生活になってからは年末調整がなくなります。この記事では、年金収入は確定申告する必要はあるのか、またどのように申告をするべきかなどの疑問について解説していきます。
目次
年金受給者は確定申告を行うべきか
毎年2月になると、確定申告がスタートします。定年退職をするまで会社勤めだった場合、これまで一度も確定申告をしたことがないという方も多いのではないでしょうか。
会社員の場合は、会社側で年末調整を行うため、社外で副収入を得ている、または年収が高額な人以外は確定申告を行う必要がありません。しかし、定年退職をして年金生活になると、状況は変わってきます。
年金には年末調整がない
会社を退職しているからこそ年金を受け取っているのですから、当然会社で行われていた年末調整をしてくれるところがなくなってしまいます。そもそも、年金自体に年末調整という仕組みはありません。
ということは、年金のみで生活している高齢者も、確定申告の義務が発生することがあります。
年金受給者の確定申告不要制度
年末調整がない年金受給者は、全員が毎年確定申告をしに行かなければならないわけではありません。年金受給者の中には面倒な確定申告の手続が不要になるケースもあります。
平成24年から始まった『確定申告不要制度』では、一定の条件を満たしていれば年金収入の確定申告が不要になります。
この制度は、公的年金の額が年間400万円以下かつ年金以外の所得が年間20万円以下で適用となり、確定申告が不要となります。
1年間でもらった公的年金の額は、年明けに届けられる『公的年金等の源泉徴収票』の『支払金額欄』で確認できるので、確定申告前に確認しておくことをおすすめします。
確定申告するべき年金受給者とは
年金受給者の中でも、条件によっては確定申告をしなければならない人も存在します。
まず、上記の確定申告不要制度の条件に当てはまらない場合、つまり年金収入が400万円以上、または年金以外の所得が20万円以上の人は、確定申告をする義務が発生します。
受けられる控除について
たとえ確定申告不要制度の対象であっても、さまざまな控除を受けたいという場合は、確定申告をする必要が出てきます。控除を受けることによって、支払いすぎた所得税の還付が受けられることもありますし、翌年度の住民税が減額されることもあります。
主な控除として、以下のようなものがあります。
住宅ローン控除
正式には『住宅借入金等特別控除』と呼ばれるこの控除は、住宅の購入、またはリフォームのために住宅ローンを利用した場合に、一定期間に限り一定の割合が税金から控除になります。
社会保険料控除
健康保険料や介護保険料など、その年に支払った全額が所得から控除されます。
生命保険料控除
社会保険料控除と同様に、生命保険料として支払った額が、所得から控除されます。
年金受給者の家族を扶養に入れられるのか
もし年金受給者が身内にいる場合、扶養に入れられるかどうかという点を疑問に思うことがあるでしょう。なぜなら、年末調整において扶養対象として控除を受けられる扶養親族は、『年間の合計所得の見積もりが38万円以下』という条件があるからです。
このことから、年金はたいていの場合年間38万円を超える額になりますから、扶養に入れるのは不可能ではないかと考えてしまうでしょう。しかし、年金受給者でも扶養に入れられることがあります。そのためには、一定の条件を満たす必要があります。
扶養に入れる年金額
年金受給者を扶養に入れる場合は、一般の場合の年間38万円とは異なる額が控除対象となります。
年金受給者のうち、65歳未満は年間70万円、65歳以上は158万円を収入から差し引くことができます。基礎控除が38万円なので、トータルでは65歳未満は108万以下、65歳以上は158万円以下の収入であれば、扶養扱いとできるわけです。
扶養控除等(異動)申告書の書き方
年金受給者の家族を扶養に入れた上で扶養控除を受けるためには、手続きが必要です。その際には『扶養控除等(異動)申告書』に記入の上、勤め先に提出します。
扶養控除等(異動)申告書の記入でポイントとなるのは、『控除対象扶養親族』という欄です。年金受給者の分の扶養控除を受ける際には、この欄に扶養する家族の氏名とマイナンバー、続柄と生年月日を記入します。
さらに扶養する家族が70歳以上なら、『老人扶養親族』欄の『同居老親等』にチェックを入れます。
まとめ
年金受給者は、受給額や副収入の有無によって確定申告不要制度が適用となるため、毎年の確定申告を行う必要がない場合があります。しかし、控除を受けて住民税や所得税の還付を受けたい場合は、確定申告をした方がお得になることもあります。
生命保険などの支払い状況や収入額から、確定申告の要否を見極める事が必要といえるでしょう。