家族の介護を理由に、勤めていた企業を退職する方は年間10万人以上とも言われており、高齢化社会で更なる増加が予想されます。これから介護をすることになった方へ、介護生活をサポートする補助金や、望まない介護離職を減らすための方法を紹介します。
目次
補助金制度を利用して介護をスムーズに
介護を受ける方に支給される補助金は、公的介護保険をベースに、介護サービスを受けるための費用や、介護を行う環境を自宅に整えるためのリフォームの住宅補助金、地域自治体が独自に制定している住宅改修補助制度等があります。
基本の公的介護保険を知る
まずは、介護保険の基本から説明します。介護保険とは、認知症や介護が必要な状態になった場合に介護サービスを受ける費用が支給される仕組みのことで、40歳以上の方は加入が義務付けられています。
65歳以上の方は『第1号被保険者』となり、介護が必要となった場合には原因に関係なく、介護保険サービスにかかる費用の9割を保障してもらうことができます。
40歳~64歳までの方は『第2号被保険者』となります。初老期認知症や脳血管疾患等の特定疾病で介護が必要となった場合にだけ、介護保険サービスを利用することができます。
補助金を活用して自宅をリフォーム
自宅で在宅介護をしたり訪問介護を受ける場合、住宅を介護しやすい仕様にするためにリフォームが必要になる場合があります。その場合、リフォームにかかる費用の9割、上限20万円まで、介護保険の住宅改修費で賄うことができます。
この補助金を利用すれば、1割の自己負担で、車椅子が出入りしやすくなるよう床をバリアフリーにしたり、トイレを洋式にして手すりを設置したり、浴室も介助のしやすい浴槽に変えることができます。
実際に自宅のリフォームを検討するに当たっては、専門家である担当のケアマネージャーにまずは相談してください。
介護には、思っているよりも費用がかかります。突然介護が必要になった時に備えて、あらかじめかかる費用や利用できるサービス、控除について知ってお...
現役世代が介護に専念できるのか?
身内の介護が必要になったものの、仕事を辞めることができない…。そんな方には、介護休業や介護離職を防止するための様々な制度があります。以下を参考にしてください。
厚生労働省が管轄する介護休業給付制度とは
『介護休業給付制度』は、今まで毎日会社に勤めてきた方が、家族を介護するために一定期間休業することができる制度です。
休業期間中、賃金が無給もしくは著しく少なくなってしまう場合に受けることができ、受給期間は、介護を開始した日から最長で93日で、休業開始時賃金の日額×支給日数の67%が支払われます。
介護休業を開始するためには、勤めている企業を管轄するハローワークに、必要な書類を提出して申請を行うことが必要です。
原則として事業主が、受給者本人が希望する場合は本人が、受給手続きを行います。事業主である企業は、労働者からの介護休業の申し出を拒否することはできません。
企業も支援、介護離職防止支援とは
介護離職者の増加は企業にとっても大きな痛手です。そのため国や自治体は、介護で離職する労働者を少なくするための努力をしている企業に、『介護離職防止支援助成金』による支援を行っています。
厚生労働省の『介護離職防止支援助成金』が支給される事業主となるためには、『事前の準備』と、『実際の取り組み』が必要です。
例えば事前の準備としては、職場が介護と仕事を両立するための環境整備に取り組むため、所定の調査票を使用して実態調査のアンケートを行ったり、研修を実施することが求められます。
また、介護に直面した労働者が出た場合は、介護休業の取得や職場復帰について面談を行い、仕事と介護が両立できるよう『介護支援プラン』を作成するといった取り組みが必要となります。
こうした職場改善に取り組む会社がどんどん増えれば、これから介護をする方にとっては、大きな安心材料になります。
家族介護慰労金制度について
『家族介護慰労金制度』は、介護保険を使わず在宅で介護をしている家族に対して支給される慰労金制度です。
この制度は、各自治体が独自に行っており、自治体によって内容や条件が異なっていますので、受給にあたっては役所の担当部署にご確認ください。
主な慰労金の内容は、現金支給や介護用品の費用負担、認知症高齢者の位置情報検索サービスの利用にかかる初期費用の支援等があります。
その他、介護サービスを受けにくい地域にお住いの方に、在宅介護をしている家族を慰労するための現金が支給されることもあります。
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補助金一覧
補助金の申請先一覧、自治体の助成金をまとめました。
補助金の申請先
- 市区町村:『介護保険』・『住宅補助金』・『バリアフリー改修補助』・『家族介護慰労金』
- ハローワーク:『介護休業給付金』
- 事業所を管轄する労働局長:『介護離職防止支援助成金』
自治体の助成金も把握
自治体が給付している助成金には以下のようなものが含まれます。
- 『介護奨励金』
- 『介護支援金』
- 介護用品にかかる費用の支援金
- 俳諧高齢者位置情報検索サービスにかかる初期費用の支援金
- 『家族介護者慰労金』
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まとめ
これから多くの現役世代の方が直面するであろう介護と仕事の両立は、とても難しいものです。できる範囲で介護にかかる費用を抑えることはもちろん大切ですが、要介護者・介護者双方にとっての良い環境作りも必要です。
そのためには利用可能な制度を上手に活用し、受けられるサポートは受けながら、介護を全うしていきましょう。