親の介護に年金なし?介護の現場で起こる金銭問題と解決策

介護の現場では無年金・低年金・使い込みなどの金銭問題が多く発生しています。今回は年金や介護費用の現状と、問題が発生したらどのように解決していくのかを紹介します。早い段階で介護の現状を把握し対策していきましょう。

介護に必要な費用は年金でおさまるか

本人が年金をもらっている場合『介護費用は年金でまかなう』と考える人が多いですが、年金だけで全てまかなえるかは個人差があります。まずは年金支給額と介護費用がどの程度なのか、現状を把握していきましょう。

平均年金受取額と実際の介護費用を知る

厚生労働省が公開している厚生年金保険・国民年金事業の概況に記載された給付状況によると、平成28年度の国民年金は『55,464円』厚生年金は『147,927円』が月平均支給額となっています。

また世帯別で見ると、総務省の家計調査年報において、2017年の月平均支給額は、夫婦世帯で『191,880円』、単身世帯で『107,171円』です。

介護費用に関しては、公益財団法人生命保険文化センターの調査によると、手すりの設置や介護ベッドなど一時的費用が平均『800,000円』、月の平均介護費用が『79,000円』と言う調査結果がでました。

年金で生活できるか?現状を知る

定年退職後に現役時代と同じ水準で生活する場合、現役時代の約7割ほどの収入が必要と言われています。

ちなみに、平成28年の総務省の家計調査年報を見ると、老後の生活費は、夫婦二人世帯で『267,546円』、独身世帯で『156,404円』です。

実際これだけ生活費がかるかは、世帯人数・住宅環境(賃貸か持ち家か)・ローン・貯蓄によってかわりますが、生活費に介護費用が加算されると年金のみの生活は難しいとわかります。

貯蓄があってたとしても、毎月取り崩すには限界があるので、生活費の見直しや家族との同居などを解決策として検討してみましょう。

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要介護者が年金なしだった場合

介護が必要な場合は、年金など自身の資金でまかなうのが一般的ですが、納付期間の不足などで年金がもらえない場合があります。年金がないと、家族の金銭的負担が大きくなり、人間関係のトラブルに発展する可能性があるので、年金の状況を確認し早めに対策しましょう。

年金の保険料納付済期間を確認する

これまで国民年金を受け取るには保険料納付済期間が25年以上必要でしたが、平成29年8月1日から納付済期間が10年以上と大幅に引き下げられました。

保険料納付済期間が足りないからと諦めていた人も、数年・数カ月の納付をすれば受け取れる可能性があります。お近くの年金相談窓口に直接いくか、年金相談窓口に電話し確認してみましょう。

自治体の公的介護保険外サービスを利用する

一般的に知られている『公的介護保険サービス』は、40歳以上の人が保険料を払い、介護が必要になったら一部の費用負担で介護サービスを受けられる制度です。

ただし、介護認定の度合いで自己負担額や受けられるサービス内容がかわるので、市町村など自治体で行っている『公的介護保険外サービス』を合わせて利用し、さらに介護費用を減らしましょう。

公的介護保険外サービスの内容は、市町村や地域包括支援センターまたは担当のケアマネジャーに問い合わせると確認できます。無料のサービスも多く、介護認定を受けてない人でも受けられるというメリットがあります。

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年金の使い込みが発覚した場合

特定の誰かが年金や財産の管理をしていると『使い込み』が問題になることがあります。疑う側・疑われる側どちらの立場にもならないよう、介護における資金管理の仕方と、実際に使い込みが発覚した場合の対処方法をみていきましょう。

財産管理の仕方、家族信託と成年後見人とは

年金や財産を管理するには『家族信託』と『成年後見人』と言う2つの制度があります。

家族信託は、判断能力が低下(認知症・知的障害・精神障害)する前のそなえや財産の継承を目的とし、家庭裁判所を通さず委託人(本人)が信用できる家族に年金や資産を委託し、受託者(家族)が管理できる制度です。

成年後見人は、判断能力の低下した人の生活を援助することを目的とし、家庭裁判所に申し立てをして家族・弁護士・司法書士などが財産管理を行う制度です。

どちらも財産管理の権限を所得できますが、本人の判断能力が低下し家族の使い込みが心配な場合は、弁護士・司法書士を成年後見人にすることで、使い込みを防止できます。

返還を求めることは可能なのか

年金や財産の使途不明金の引出があり、使い込みが発覚した場合『不当利得返還請求』により返金を申し立てできます。

ただし、使途不明金が使い込みとして認められるには、それを証明する証拠が必要です。引出頻度が少なく金額も少ない場合は、純粋に生活費や医療費・介護費として引き出された可能性もあります。

使途不明金を発見した場合は、冷静に検討し明らかに使い込みだと思われるものに対し不当利得返金請求を行いましょう。

受け入れ可能な介護施設はあるか

家族と同居ができない場合や自宅介護ができなくなった場合、介護施設への入居を考えますが、入居の順番待ちになったり費用に差があったりとスムーズに入居できない可能性があるので、事前にどのような介護施設があるのか把握しておきましょう。

介護施設のタイプ

介護施設にはさまざまタイプがありますが、まずは代表的な介護施設のタイプを見てみましょう。

タイプ 内容

費用

介護認定度 入居までの期間
特別養護老人ホーム 代表的な公的介護施設で比較的安価で利用することができる。

60,000~

150,000円

要介護3~要介護5 長くなることが多い
介護付有料老人ホーム 常駐職員による介護サービスを受けることができる。 120,000~350,000円 自立~要介護5 短い
サービス付き高齢者向け住宅 補助や介護サービスを目的とし高齢者を対象にした住宅。 50,000~250,000円 自立~要介護3 短い
グループホーム 認知症や日常生活が困難な高齢者が介護サービスを受けることができる。

120,000~200,000円

要支援2~要介護5 長くなることもある
ケアハウス 低所得者や身よりがない高齢者が介護サービスを受けることができる。

60,000~150,000円

自立~要介護3 長くなることが多い

介護サービスを受けつつ費用をおさえられる特別養護老人ホームやケアハウスが人気ですが、そのぶん入居までに時間がかかることが多いです。どのタイプの介護施設に入居するか家族で話し合い、早めに準備を進めスムーズに入居できるようにしましょう。

介護費用を抑える負担限度額認定証とは

費用が安い介護施設に入居しても年金だけでは支払いが難しい場合があります。そんなときは、認定条件を満たした人を対象に自己負担費用を減らせる『負担限度額認定証』を利用しましょう。

負担限度額認定証は4段階あり、所得によって負担限度額がかわります。

【特別養護老人ホームの負担額(1日あたり)】

負担段階 食費 多床室 従来型個室 ユニット型準個室 ユニット型個室
第1段階 300円 0円 320円 490円 820円
第2段階 390円 370円 420円 490円 820円
第3段階 650円 370円 820円 1,310円 1,310円
第4段階 840円 840円 1,150円 1,970円 1,970円

【認定条件】

所得:配偶者を含む世帯全員が住民税非課税である場合。
財産:1,000万円(配偶者がいる人は合わせて2,000万円)以下
※預貯金・有価証券・貴金属・投資信託・現金が財産に該当します。

負担限度額認定証の申請は、お住まいの市区町村窓口に申請書を提出します。詳細が知りたい場合や申請に不安がある場合は担当のケアマネジャーに相談しましょう。

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まとめ

介護の現場で発生する金銭問題は、年金の支給額減少とともに年々増えていく傾向にあります。

先のことだと油断し介護するときになって慌てて対処することにならないよう、年金の把握や財産管理の方法、入居する介護施設のタイプなどを家族で話し合い、早めの対策を心掛けましょう。