葬儀・お通夜に持参する香典について。恥をかかないための相場やマナー

葬儀に持参する香典を、どのように渡せばよいのかわからない人も多いでしょう。香典には金額の相場や渡し方のマナーがあり、種類も豊富です。この記事では、香典を渡す際に恥をかかないように、知っておきたい相場やマナーについて詳しく紹介します。

なぜ香典を渡す必要があるのか

香典は、古くから伝わる風習の1つです。香典の『香』の字は、故人へお供えするお線香・抹香などの意味があり、それらを金銭に置き換えたものと言われています。

現代でもその習慣が残り、香典は故人へ供えるものとして、遺族に渡しているのです。

また、昔は葬儀で近隣の人々に食事などを振舞う習慣があったことや、葬儀に一時的なお金が必要になるということから、それらの費用を扶助するための役割の1つを担っています。

香典は、故人への供養と、遺族への扶助のために必要なものとして現代でも行われています。

香典の金額は、故人との関係によって変わる

香典を用意するのに、いくら包めばよいのか悩む人も多くいます。香典を決める際には、相場を知ることから始めましょう。個人との関係によって大きく変わるため、相場は3,000円から100,000円と幅広くなります。

香典は多すぎ・少なすぎは失礼にあたるので、しっかりと相場を知り、用意しなくてはなりません。

また、自分が結婚をしている場合には、義理の親・兄弟・姉妹・親戚の際も、自分の親族と同じ額にしましょう。

一般的な香典の相場

一般的な香典の相場は、3,000円から10,000円と言われています。しかし、故人が親戚や家族であれば10,000円から100,000円と高額になります。

ここでは、故人との関係別に香典の相場をそれぞれ紹介します。

故人が自分の親である場合には、50,000円から100,000円が一般的となっています。なぜ金額の幅が広いのは、子供(自分)の年齢で相場が異なることが理由です。

40代以降の年齢では、100,000円が相場です。30代までの比較的若い年代では、50,000円から100,000円が相場となっています。

祖父母や親戚

故人が祖父母や親戚の場合には、10,000円から30,000円が相場と言われています。また、親戚から香典を以前受け取ったことがある場合には、その額を参考に決めます。

兄弟・姉妹

故人が兄弟・姉妹である場合には、30,000円から50,000円が相場とされています。ただし20代の人は、相場より少なくても問題ありません。

また、40代以上の人においては、相場よりも多い金額という傾向が高くなります。

仕事関係の友人、知人

故人が仕事関係の友人や知人である場合には、5,000円から10,000円が相場です。なお、仕事関係の友人や知人本人ではなく家族の場合には、5,000円が相場です。

友人、知人、隣人など

故人が友人・知人・隣人などの場合には、5,000円から10,000円が相場とされています。

3,000円からという風習がある地域もありますが、最近では当日香典返し(当日に香典返しとして渡すこと)を行う葬儀も多く、3,000円では少なすぎる場合があります。

恥をかかないためには、最低でも5,000円と考えておくようにすると安心です。

多く包むと失礼になることも

香典は少なすぎるのは失礼ですが、多くすぎるのも失礼になることがあります。香典を受け取った場合、遺族は香典返しを『半返し』で行う必要があります。

半返しとは、香典の半分から3分の1の金額相当の品物をお礼としてお返しすることです。香典金額が多すぎると香典返しの金額も増えるため、遺族側にとって負担となる可能性があります。

また、自分側に不幸があった場合には、相手側は以前受け取った香典と同じ金額を用意しなくてはならないという負担をかけることにもなるからです。

故人が祖父母の場合、孫は香典をだすのか

故人が祖父母の場合、孫が未成年の場合には親が香典をだすだけで問題ありません。しかし、孫が成人している場合には、香典を個人でださなくてはなりません。

20代ならば10,000円、30代ならば10,000円から30,000円、40代以上の人は10,000円から50,000円が相場となっています。また、既婚者であれば30,000円から50,000円の人が多くなっています。

香典袋は宗教、宗派によって使い分ける

香典袋は色々な種類があり、宗教や宗派によって使い分けるのが正しいマナーです。ここでは、香典袋の種類と、水引について紹介します。

香典袋の種類

香典袋には、さまざまな表書きが印字され、種類豊富です。日本で最も檀家が多い仏式の浄土真宗では『御香典』・『御香料』と印字されたもの、それ以外の仏式では『御霊前』にします。『御仏前』は、四十九日法要後に使用します。

神式では、『御霊前』・『御玉串料』・『御榊料』が使用できます。キリスト教であれば、『お花料』と印刷されているものにしましょう。

包みには下記のような種類があります。

  • 白無地
  • 蓮の花の絵や透かしのあるもの
  • 十字架や百合があるもの

全ての宗教・宗派で使えるのが白無地です。蓮の花や透かしがあるものは浄土真宗、十字架やユリがあるものはキリスト教で使用できます。

宗教や宗派がわからなければ、白無地に御霊前と書かれたものを選びましょう。

水引がついているもの、印刷されているもの

香典袋には、水引がついているものと印刷されているものの2種類あります。どちらを使えばよいのかという判断は、包む香典の金額によって決まってきます。

目安としては10,000円までは、水引が印刷された香典袋を選びます。10,000円以上では、水引がついているものにします。

10,000円から30,000円までは黒白の水引、30,000円以上であれば高級和紙で双銀の水引の香典袋を使用しましょう。

また100,000円以上の高額であれば、高級和紙で水引の造りにこだわっているものを選びます。

香典袋の書き方ポイント

香典袋の書き方にもマナーがあります。香典袋に使用するインクの色・金額の記入方法・氏名の記入方法など、いくつかのポイントさえ押さえておけば心配はいりません。

ここでは、これだけ押さえておけば大丈夫という香典袋の書き方のポイントを紹介します。

できれば薄墨で

香典袋には、薄墨の毛筆で記入するのがマナーです。薄墨には、『訃報に悲しむ際に流した涙で墨が薄まった』という意味があります。

そういった風習が残り、古くから香典袋には、薄墨の毛筆を使うのが弔事におけるマナーの1つとされています。

現在では墨を使う必要がなくなったこともあり、毛筆で上手く書けないという人は、香典袋に硬筆を使ってもあまり大きな問題ではありません。

しかし、最近では毛筆になれていない人でも書きやすい薄墨の筆ペンも販売されているので、できれば薄墨を使うようにしましょう。

中袋ありの場合

香典袋に中袋がある場合には、中袋にお札を入れます。中袋とは、お札を入れる白無地の封筒のことです。中袋の裏面に金額を書く場所がある場合には、裏面に金額・フルネーム・住所を書きます。

裏面に金額を記入する欄が無ければ、表に金額を記入しましょう。この際、中袋には薄墨ではなく黒色を使います。

金額の記入の仕方は『金参萬円』のように数字ではなく旧字体の漢数字を用いるのが正式です。

また、中袋ではなく中包みが入っているものもあります。中包みは、中袋のような封筒ではなく、白い無地の紙でお札を包むものです。中包みも中袋と同じ使い方をします。

中袋なしの場合

香典袋の中には、中袋がない場合もあります。中袋がなければ、お札を香典袋にそのまま入れましょう。

香典の金額・フルネーム・住所などは香典袋の裏面に記入します。この際に、表面と同様に薄墨を使いましょう。

連名の場合

本来、香典は連名でだすよりも、個人でだしたほうがよいとされています。しかし、仕事関係の人の葬儀では、香典を連名で出すシーンも少なくありません。

香典を連名でだす場合は、名前の書き方に注意します。表面の水引の下に3名までの名前を書きましょう。4名以上であれば『〇〇一同』と書きます。

名前の書き方は、2名であれば水引の下の中央に2名のフルネームを書きます。3名であれば水引の真下に1人、左右に1人ずつフルネームを記入しましょう。3名の場合には右側に上司のフルネームを、もし同僚であれば五十音順に並べます。

また4人以上では、表面に個人のフルネームを書くのではなく、香典を出した人のそれぞれのフルネーム・住所・金額を記入した紙をお金と同封します。

お札の入れ方にもマナーがある

香典袋には、お札の入れ方のマナーがあります。ただお札を入れて渡せばよいわけではありません。香典は、故人への供え物であるため、しっかりとマナーを守りましょう。

ここでは香典でのお札の入れ方のマナーについて解説します。

新札はNG

結婚式やお祝い事では新札を入れることがマナーですが、香典では新札を入れるのはNGとされています。

新札はあらかじめ用意しておいたものと考えられます。葬儀で渡す香典で新札を入れると不幸を予期していたと捉えられてしまうため、新札ではなく旧札を入れます。

しかし、旧札であればなんでもよいわけではありません。破れて汚れたお札やしわだらけのお札など、あまりに汚いお札を入れることは失礼です。

故人に供えるものとして、きれいなお札を使用したいという理由から新札を使うならば、あらかじめ折ってしわをつけて香典袋に入れましょう。

入れる時のお札の向き

香典袋にお札を入れる際には、お札の向きにも注意しましょう。お札には、表面と裏面があります。人物画が印刷されているのが表面です。

お札を入れる際には、人物画が見えないように裏面にしてから入れます。人物画の向きに関しては、人物が上になるように入れる説と、下になるように入れる説の両方の説があるため、あまりこだわらなくても大丈夫です。

しかし、複数枚のお札を入れる場合には、すべてのお札の向きをきちんとそろえてから入れるようにしましょう。

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香典は遺族ではなく受付に渡す

葬儀で渡す香典は遺族ではなく、芳名帳を記帳する受付で渡すのが一般的です。受付で香典を渡す際にも、正しい香典の渡し方・マナーがあります。

特に難しいことはないのですが、葬儀の参列が初めてで慣れない人は、手順がわからずに困惑する可能性があります。

ここでは、初めて葬儀で香典を渡す人でも、恥をかかないための正しい渡し方について詳しく紹介します。

一礼をしてひと言挨拶

葬儀を訪れたら、まず受付に向かいます。受付では、一礼をしてひと言挨拶をしましょう。挨拶の仕方がわからないという人は、下記のような挨拶を参考にしてください。

  • 『この度はご愁傷さまでした』
  • 『心よりお悔やみ申し上げます』
  • 『ご冥福をお祈りいたします』

上記のような挨拶とともに一礼をしてから、芳名帳へ記帳します。先に香典を渡す会場や、芳名帳に記入してから香典を渡す会場など、会場によっても異なるので前の人を見てそれにならいましょう。

袱紗の使い方

香典袋をそのまま持ち歩くのはマナー違反です。『袱紗(ふくさ』と呼ばれる布、または布の袋に包んで持ち歩きましょう。袱紗には金封袱紗・爪付き袱紗・台付き袱紗の3種類があります。

金封袱紗での香典袋の使い方は、下記のとおりです。

  1. 開きが左側にくるように袱紗を広げる
  2. 左開きにした袱紗の右側の袋部分に香典袋の表面がくるように入れる

爪付き袱紗・台付き袱紗の使い方は、下記のとおりです。

  1. 袱紗を広げる
  2. 中心よりも右側に、香典袋を表面が上になるように置く(台付きの場合には台と一緒に)
  3. 右側・下側・上側の順で袱紗を折りたたむ
  4. 最後に左側の袱紗を折りたたんで、爪で止める

受付では、袱紗から香典袋を取り出して、袱紗の上に置いて両手で渡します。

受け取るのは香典返しではなく会葬御礼

弔問を終えたあとに、清めの塩・海苔やお茶などの品物・会葬礼状などが入った紙袋を受け取ります。この紙袋は、香典返しではなく会葬御礼です。

会葬御礼とは忙しい中、弔問に訪れてくれた弔問客に対して渡す、遺族からのお礼状とお礼の品のことです。

香典返しは香典に対してのお礼の品ですが、会葬御礼は香典の有無に関係なく弔問に訪れてくれた人すべての人に渡されます。

葬儀に参列せず、香典のみ渡すときは

遠方にいる・慶事と重なっている・体調不良などの理由で葬儀に参列できない場合には、誰かに頼む・郵送する・後日持参するなどの方法で香典を遺族に渡すことが可能です。

参列できずに、香典のみを渡すことは失礼なのでは?と心配する人がいますが、参列しない場合にはむしろ香典のみを渡すことが社会人としてのマナーです。

ここでは、葬儀に参列せずに香典のみを渡す場合の3つの方法について紹介します。

代理人から渡してもらう

葬儀に参列できない場合、代理人にお願いをして渡してもらう方法があります。代理人に頼む際、誰にお願いするかが大切なポイントです。

自分の代わりに参列をお願いするため、先輩や上司など目上の人に頼んではいけません。葬儀に参列する人の中でも、親しい友人・知人・同僚にお願いをしましょう。

また、香典を自分で用意して代理人に渡す方法がベストですが、代理人に事前に香典を渡せない場合もあります。

そういった際は、代理人に香典袋と香典のお金を用意してもらう必要があるので、なるべく早めに代理人に香典料と香典袋の代金を支払います。

遠方ならお悔やみ文と一緒に郵送で

自分が遠方にいて葬儀に参列できない場合には、香典をお悔やみ文と一緒に郵送しましょう。香典を郵送で渡すことは、遺族に対して失礼ではありません。むしろ遠方の人は、葬儀に参列せずに郵送という形をとるケースが多くなっています。

香典は、葬儀と同様の香典袋を用意します。同封するお悔やみ文は、葬儀に参列できなかったことへのお詫び・お悔やみの内容にします。

香典は現金書留で遺族の自宅に送りましょう。会場に送ってもすでに遺族がいない場合があるためです。

また、葬儀当日は遺族は忙しいため、万が一受け取れなくても再配達が可能な自宅に郵送します。

後日渡すときは表書きに注意

後日、遺族の自宅を弔問に訪れて香典を渡す方法もあります。その場合は、表書きに注意が必要です。

宗教・宗派によっても表書きは異なりますが、一般的には四十九日法要までは『御霊前』、四十九日法要後は『御仏前』と表書きに記入しましょう。

ただし、浄土真宗の場合には『御霊前』という言葉は用いられませんので注意してください。

香典の表書きは、四十九日法要を終える以前に渡すのであれば、葬儀の受付で出す表書きと同じものにしておけば問題ありません。

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まとめ

香典には色々なマナーがあります。受付で香典を渡す方法・袱紗の使い方・香典の金額の相場をしっかりと理解してから葬儀に参列しましょう。

また、葬儀に参列できない場合でも香典を渡すことはマナーです。正しい知識を身に付け、恥ずかしい思いをしないようにしましょう。